約8000年前から現代までの北米大陸の大気循環の変化を解明

2014年04月26日 12:52

 約8000前の北米大陸の大気の状態はどうなっていたのか。東京大学大気海洋研究所の芳村圭准教授と劉忠方元 日本学術振興会外国人特別研究員(現中国天津師範大学准教授)らは、北米大陸の東側と西側のそれぞれで、洞窟の天井から落下する水滴に含まれた炭酸カルシウムが結晶化したタケノコ状の岩石(石筍)と湖で採取された炭酸カルシウムなどの沈殿物(湖底堆積物)の酸素安定同位体比のデータを組み合わせ、コンピュータシミュレーションした。

 太平洋北米パターン(PNAパターン)は、北太平洋・カナダ西部・北米東海岸付近に東西のむきに列を作るように現れ、数日から数週間程度で変化する気温や気圧の偏差のパターンのこと。この現れ方によって北米の天候が大きく影響を受けるため、多くの研究がされてきた。

 その結果、エルニーニョ・ラニーニャ現象によって引き起こされる、地球大気が持つ固有振動であるというような理解が得られてきましたが、PNAパターンそのものが、数十年や数百年、数千年といった長い時間スケールにおいてどのような変動をしてきたのかはあまりわかっていなかった。

 今研究グループは、米国西バージニア州バックアイクリーク洞とオレゴン州オレゴン洞ナショナルモニュメントで採取された石筍とニュージャージー州グリネル湖およびカナダユーコン州ジェリービーン湖で採取された湖底堆積物の酸素安定同位体比データを、北米の東側のデータと西側のデータのペアとして組み合わせて用いるとPNAパターンの良い代替指標となることを見出した。

 そして、石筍と湖底堆積物の両方のデータから、過去8000年の間にPNAパターンが北米東海岸で高温、カナダ西側で低温となる負の状態から北米東海岸で低温、カナダ西側で高温となる正の状態に移り変わってきたことを発見した。

 この移り変わりを芳村准教授が開発したモデルによるコンピュータシミュレーションにより確かめた。このモデルは水の酸素同位体比の物理的な変動メカニズムを組み込んだ気候モデルで、同位体大循環モデルと呼ばれているものです。大気海洋結合モデルによって再現された完新世中期(約8000年前)と現在の海面水面分布を境界条件として用いたシミュレーションの結果、二つの時代の降水の酸素安定同位体比の差が、確かに現代の負のPNAパターンと正のPNAパターンの差とよく似ていることが判明した。

 さらに、それら石筍と湖底堆積物の酸素安定同位体比データの変動をクロススペクトル解析すると、いずれのペアでも約200年の周期で変動が同期していることがわかった。そしてこの東西の差の大きな周期変動は、ほぼ同じ周期の太陽活動(ド・ヴィリエ周期)と良く同調していることが示唆された。

 これらの結果から、PNAパターンは現実的には大気循環の数ヶ月スケールの変動を表す指標であるにもかかわらず、それが数百年から数千年スケールでも、地球規模の気候変化の影響を受けて、大きく変化していることを明らかにした。

 このような太平洋北米パターンの長期的な変動を明らかにしようとする研究は、過去の大きな気候変動によって大気循環が大陸スケールでどのように変動したのかを解明する手掛かりとなるという。加えて、太平洋北米パターンは北米だけではなく日本の天候にも大きな影響を与えるため、地球温暖化とも関連して、暖冬や厳冬の中長期的予測の改良に資することができると期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)