職業教育学校設立か、若者の雇用安定の可能性も

2014年06月15日 12:27

 文部科学省は、現在の大学教育や専門学校の在り方を見直し、職業教育の充実を図るための専門的な学校を創設する案を練っているようだ。現在の専門学校は、高校や大学などの学校教育機関とは異なる立ち位置にあり、公的支援が不十分な状態である。そのため、それぞれの専門学校の運営方針によってムラが生じ、教育内容の質の保証が懸念されている。文部科学省は学校教育法を改正し、専門学校の地位を引きあげることを検討。また、新たに職業教育を目的とした専門学校を創設することを考えている。職業教育に力を入れ、専門学校の価値を見直していくことは、学生自身に将来就く職業への意識を具体化させる役割を持つだろう。国をあげて、雇用に強い専門的な職業教育学校への進路を拡大していくことは、学生の進路の分散にも繋がり、現在の大学生による就職活動の競争も緩和されていくかもしれない。

 大学生の多くは、せっかく大学に入学しても勉強に打ち込むどころではなく、就職活動に追われるといった矛盾した日々を過ごしている。この問題は年々深刻化しており、正社員という企業の一席を得るために昼夜問わず就職活動に走り回るが、100社以上を受けても内定をもらうことができないという悲惨な状態だ。大量に届けられる不採用の通知は、社会からの拒絶を突き付けられているようでもある。中には自己否定感を強くし鬱病を発症、最悪のケースでは自殺してしまう学生もいる。また、せっかく就職したにも関わらず、会社の労働環境が酷いものだったり、理想とは異なる仕事とのギャップに悩み、職を離れることも多い。実に大卒者の3割が、仕事について3年以内に離職しているという。
 
 このような流れが生まれた背景には、長引く不況があることは言う間でもないが、上昇する一方の大学進学率を追い風に、目的意識の薄いまま、ただ何となく進学してしまった学生が多くいることも要因のひとつである。文部省の学校基本調査によると、1989年の大学進学率は24.7%であったのに対し、現在は二人に一人が大学に進学している。普通科に通う高等学校の生徒で就職を選択する者は全体の1割を下回り、ほぼ全員が大学などに進学するという。普通科の生徒の中には、高校を進学の通過点としか考えておらず、進路への明確な意識を持たない者も少なくないらしい。

 大学院を卒業しても仕事のない若者がいるというこのご時世、職業に直結することのない学歴だけを背負っていても何の役にも立たない。就職活動の過酷な闘いに飲みこまれてから気づくのではもう遅いのだ。「学校」の在り方を問い直し、何のためにそこに通うのか、さらには将来の見通しも含めて学生に自覚を促すような教育環境が必要とされるだろう。(編集担当:久保田雄城)