再生可能エネルギーにより発電された電気の全量買取制度が開始され、様々な企業がメガソーラー発電事業に参入していることが話題となっている太陽電池。この太陽電池につき、三菱化学が塗布変換型有機化合物を塗布する太陽電池を世界で初めて開発して以降、次世代の太陽電池として注目を集めている有機太陽電池であるが、近時はさらに研究が進みその実用化に期待が高まっている。
今年2月に、住友化学が開発した材料を使用してカリフォルニア大学ロサンゼルス校が作製した有機薄膜太陽電池の変換効率が、米国の国立再生可能エネルギー研究所において10.6%であると認定され、世界トップレベルとなったことを皮切りに、同月には名古屋大学と京都大学などが、有機エレクトロニクス材料の革新的な素材の開発法として、ホウ素を炭素骨格に組み込むという新手法の開発に世界で初めて成功。この開発法は、高い光電変換特性を持つ有機太陽電池の実現につながると期待されるものである。さらに3月には筑波大学などが、有機薄膜太陽電池の高効率化につながる分子レベルの新しい解析手法を、世界で初めて開発したと発表。本手法の確立により、太陽電池素子作製の初期段階で素子の潜在能力を検討し、高効率化を目指せるデバイスを取捨選択できるようになるという。また、既存・新規の太陽電池素子について、構造欠陥部位を分子レベルで測定・解明し、改善を図ることで、さらなる特性の向上及び高効率化を目指すことが可能となり、有機薄膜太陽電池の発展に大きく貢献するという。
7月に入ってからは、東京大学がリチウムイオンを閉じ込めたフラーレンの化学修飾に初めて成功したと発表。フラーレンとは、有機薄膜太陽電池の開発に欠かせない材料として期待されているもの。しかし、フラーレンをそのまま用いてもエネルギー変換効率が悪いため、化学合成によりフラーレンに様々な有機分子を取り付けること(化学修飾)によって合成される高性能なフラーレン誘導体の開発に注目が集まっている。そして今回、リチウムイオンを内包することで、その性質をさらに高めることに成功したという。これにより有機薄膜太陽電池の高効率化がさらに進むと期待されている。
そして7月24日には、JSTと金沢大学がナノロッドシートを用いた高効率有機太陽電池を開発したと発表。有機薄膜太陽電池の効率向上に不可欠な従来構造には、高コストや材料面で限界があったものの、斜め蒸着で形成したナノロッドシートの新構造により、従来を越える効率が実現したという。これにより、高効率化・簡便・安価で材料を選ばない新構造の有機太陽電池に対する期待がさらに高まっている。
その研究の主体が企業ではなく大学であるからか、注目が集まり期待が高まる一方で、実用化の目途については一向に聞かれないのが現状である。研究・開発が進んでいるにもかかわらず、どこか足並みが揃わず、もたついている雰囲気は否めない。こうした技術こそ、一日も早い実用化に向けて産学連携した研究・開発が必須なのではないだろうか。