超高速取引(HFT)に翻弄されるマーケット

2014年06月20日 12:40

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東証の取引システムのそばに設置したサーバーから注文を出す「コロケーション」サービスはその典型例で、東証はホームページ上でも積極的に推進を行っている。

 コンピューターを駆使した超高速取引(HFT)に対し、欧米で逆風が強まっている。米国ではHFTを活用する投資家の「勝ちすぎ」に注目が集まり、「一般投資家より有利な立場を利用しており、不公平だ」との批判が浮上。米証券取引委員会(SEC)のメアリー・ホワイト委員長は、HFTの業者に登録の義務を課すなど監視の強化を検討していることを明らかにした。

 発端はHFTを手掛ける投資会社「バーチュ・ファイナンシャル」が上場に向けて開示した資料だった。「5年間で負けたのはたった1日」2009年から13年末まで、取引を行った1238日で損失が出たのがたった1日という勝ちっぷりに驚きが広がった。通常の取引では考えられない勝率の高さが「何かカラクリがある」との疑念を呼び米連邦捜査局(FBI)がインサイダー取引の有無の調査に乗り出すに至った。

 また、米証券会社がHFTについて欧米の機関投資家を対象にした意識調査の結果を公表したところ、HFTを「有害」とみている投資家は米国で51%過半を占めたほか、欧州でも39%に上った。多くの投資家がHFTを問題視している実態が浮き彫りになった。

 HFTは大規模なシステムを使って価格や注文情報をいち早く取引に生かせるため、一般の投資家に先んじて機敏に売買できる。低リスクの超短期取引を繰り返して小幅な利益を積み上げる「薄利多売」型の手法で、米国株ではHFTの売買が全体の5割程度にのぼると言われている。

 ところで、日本においては東証がHFTに積極的に活動してもらうように、数々の施策を実施している。東証の取引システムのそばに設置したサーバーから注文を出す「コロケーション」サービスはその典型例で、東証はホームページ上でも積極的に推進を行っている。そして現在では、「売買代金の4割超、注文件数で6割超」がコロケーション経由での発注とされており、このかなりの部分がHFTの注文であることは疑う余地がない。

 政府はNISA(少額投資非課税制度)など環境整備を整え、貯蓄から投資へと個人マネーを呼び込もうとしている。多種多様な考え方を持つマーケットは、それだけ出来高が増え、大量の資金をやり取りできる大きなマーケットとして成長することになる。しかし、HFTという超短期志向の売買だけが突出して目立つようになれば、マーケットはバランスを欠き、弊害だけが目立つようになってしまう。米国ではHFTに対する規制が強化されつつあるが、決して対岸の火事ではない。(編集担当:久保田雄城)