秩父市でバイオマス発電プロジェクト 地産地消電力の実現なるか

2014年06月22日 11:53

 「地産地消」―農産物の分野では提唱されて久しいこの概念が、今新しい分野でも検討され始めている。それが、電力の分野だ。東日本大震災と福島第一原発事故以降、大きな課題として浮上してきたのが、電力をいかにして地域で確保するかということだった。様々な自然エネルギーが地域に根ざした電力になろうと切磋琢磨しているが、ここにまた1つ、新たなエネルギー源が名乗りを上げようとしている。

 今月、早稲田大学発環境系ベンチャー企業 早稲田環境研究所(東京都新宿区)は、かぶちゃん電力(東京都千代田区)、サイサン(埼玉県さいたま市)、ソーシャルインパクト(東京都新宿区)と共同でバイオマス発電事業プロジェクトを開始することを決定した。このプロジェクトは、間伐材や台風で倒れた被害木などの「未利用バイオマス」を有効利用することを目指すものだ。

 近年新たなエネルギー源として取り上げられるようになった「バイオマス」とは、太陽のエネルギー等から生物がつくりだすエネルギーを利用した発電方法で、大気中の二酸化炭素を増加させない「カーボンニュートラル」という特性を持つことから注目されている。このバイオマスには2種類があり、それが家畜排泄物や食品廃棄物をはじめとした「廃棄物系バイオマス」と今回のプロジェクトで利用される「未利用バイオマス」である。日本のバイオマスは廃棄物系バイオマスが主流であり、未利用バイオマスはなかなか進んでいない。2002年にはバイオマスエネルギーの推進を目指して「バイオマス・日本総合戦略」が策定されたが、その後の10年間で利用率はわずか1%しか伸びていない(農林水産省調べ)。日本では停滞している未利用バイオマスだが、ヨーロッパでは既にメジャーなエネルギー源として認知されている。広大な森林をもつ日本でも、同様の利用が望まれている。

 今回のプロジェクトでは「地域PPS(新電力)のスキームを活用した地産地消型のエネルギーシステムを構築すること」を含めた事業設計を行うとされている。PPSとはPower Producer and Supplier(特定規模電気事業者)の略だが、特に「地域PPS」と言った場合、このPPSが地域から電力を調達し、地域に供給することを指す。このような形での電力の「地産地消」を進めることはこれからのコミュニティを考える上で必須だろう。活力あるベンチャー企業によって、電力の「地域主権」が進むことを期待したい。(編集担当:久保田雄城)