性別適合手術ができる病院の条件が厳しくなる理由とは

2014年06月22日 19:12

 体と心の性の不一致に悩む性同一性障害の人が、より自分らしく生きられるために選択する性別適合手術。しかし、重い後遺症を負い、仕事を続けることができなくなったり、術後の痛みによる肉体的・精神的苦痛を日常的に背負わざるをえなくなるなど、手術によって生じるトラブルは絶えないようだ。

 2013年7月の共同通信の記事によると、性同一性障害に関わる団体が性別適合手術について調査した結果、国内外で性別適合手術を受けた105人中、15%の人が後遺症を負ったと回答していたことが分かった。中には「重篤な障害が発生した」「再手術が必要になった」という人もいたらしい。一方で、7割の人が「満足」と回答したようで、性同一性障害の当事者にとって、性別適合手術の必要性は高いのだろうと推測される。

 04年に施行された性同一性障害特例法によって、戸籍上の性別の変更が認められるようになったが、そのためには性別適合手術を受けていることが条件として挙げられているのだ。すなわち、性同一性障害の人が自分の心に合致した性別へと変更を進める社会的な手続きの第一段階としても、手術を受けることは必須なのである。

 日本精神神経学会は5月30日、「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第4版)」において、性別適合手術に関する治療の指針を改定することを発表した。

 改定内容は、「性別適合手術は麻酔科医が麻酔を担当し、入院可能な医療機関にて行われるべきである。」というものだ。これによって手術が可能とされる病院は、札幌医大病院、山梨大病院、岡山大病院などの、設備の整った病院に限定されるようだ。

 後遺症や術後のトラブルをなくし、安全性を優先させることを狙いとする改定により、性別適合手術に対する整備がまた一歩進んだようだが、手術を可能とする条件に合った病院は非常に少ないとされている。また、健康保険の適応外とされる手術の費用は、美容整形と同じく、基本的には全額自己負担であるらしい。そのため、場合によっては100万円以上かかるという高額な治療費を準備する必要があり、手術を受けるには依然として高いハードルがそびえているようだ。(編集担当:久保田雄城)