がんの第4治療法「免疫細胞療法」研究への継続増資(カナダ)

2014年05月17日 19:08

 カナダ最大の経済都市であるオンタリオ州政府は、年間約9,300億円の収益を生み出すと予想されている免疫細胞療法研究を、さらに支援していく方針を発表した。

 オンタリオ州は、これまでも免疫細胞療法の研究とイノベーションに約3,534億円以上を投資してきた。今回はさらに、この産業の新興セクターとされる、マックマスター大学(同州 ハミルトン市)らが行う共同プロジェクトセンターに、約3億7,200万円投資する見通し。

 共同プロジェクトでは、これまで行われてきた免疫細胞療法を手動から自動生産に変えるための生物医工学・高度製造業的研究が行われている。同州は、自動生産が可能となれば、これまで高額であったがんなどの免疫細胞療法の治療コストが大幅に下げることが可能になると考えている。

 共同プロジェクトセンターはハミルトン市に拠点を構え、2016年の初めから運用が開始される予定。

 がんの治療法はこれまで、手術等でがん細胞を直接切除する「外科療法」、抗がん剤を使用してがん細胞の退縮および消失を期待する「化学療法」、がんの部位に経皮的に放射線を照射する「放射線療法」の3つが三大療法として考えられてきた。

 これらは、いずれも直接がん細胞を攻撃ないし切除することを目標としている。そんななか、近年「4つ目の治療法」として注目されているのが、「免疫細胞療法」だ。ヒトの体にもともと備わっている免疫細胞の機能を高めることで、がん細胞と戦わせようという、これまでにない考え方に基づいている点が特徴。ほかの治療法と比較し、副作用が少ないため注目を浴びている治療法ではあるが、医療費控除等が利用できるケースもあるとはいえ、治療法によっては一回当たり10万円から150万円と高額なことがネックとなっている。

 カナダのみならず、国内でも研究がなされている。独立行政法人理化学研究所は千葉大学と連携し、NKT細胞というリンパ球の一種を標的にして肺がんを治療する免疫細胞療法を開発中。 NKT細胞は強力な免疫増強作用を持ち、免疫系の他の細胞も動員して、がん細胞を殺す働きをするという。

 日本人の3人に一人ががんで亡くなるといわれている現在、より安価で効果的な治療法が確立することを願ってやまない。(編集担当:堺不二子)