イラク情勢緊迫 石油価格高騰で注目高まるMLPとは

2014年06月29日 20:03

 カブドットコム証券<8703>は、6月23日より、日興アセットマネジメントなどが運用するファンド10本の取扱を開始した。これにより、同社の取扱う投資信託は480ファンドとなり、これまで以上に投資家の多様なニーズへの対応が可能になった。新たに取扱が始まったファンドで注目すべきは、シェールガス革命におけるエネルギーインフラ関係の投資対象として注目を集める「MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)」だ。

 米国の「シェール革命」が注目されて久しいが、金融市場で注目を集めているのが、米国における共同投資事業形態のひとつであるMLPだ。同様の投資形態である不動産投資信託(REIT)が不動産からの賃料収入を主な収益源としているのに対し、MLPはエネルギーインフラ関連事業が収益の中心だ。

 具体的には石油や天然ガスなどのパイプラインや貯蔵施設といったエネルギーインフラ関連事業に投資を行ない、パイプラインや貯蔵施設の利用料などを収益源としている。生産者などと利用料について長期契約を結ぶことで安定的に収益を得ているほか、エネルギーは企業や家計に不可欠であることから、景気変動の影響を比較的受けにくい収益構造となっている。

 これまで、米国の天然ガス輸出は自由貿易協定(FTA)を結ぶカナダやメキシコなど以外は米政府の認可が必要だったが、近年、日本などFTAを締結していない国への天然ガス輸出を解禁しはじめた。米エネルギー情報局によると、2018年には米国が天然ガスの純輸出国に転換すると予想されており、世界の天然ガス市場における米国産の影響力がさらに増していくものとみられる。

 最近では、米国による欧州やウクライナへの天然ガス輸出案が、ロシアのウクライナに対する介入拡大を抑えるために有効な一手とされるなど、天然ガスの輸出に対する注目度が増している。それに加えイラク情勢の緊迫により高騰する原油価格が、MLP投資にとって追い風になっている。債券や株式など伝統的な投資対象への投資に対し、金融派生商品やREITなどオルタナティブ投資(代替投資)と呼ばれる投資手法がある。MLPは後者に分類されるが、これらは市場リスクとは連動しない絶対的なリターンを目的とする。したがって、市場低迷時にも高いリターンを得られる可能性もあるが、固有のリスクも存在する。個人投資家の選択肢が増えるのはよいことではあるが、高度な投資リテラシーを求められることにもなる。(編集担当:久保田雄城)