カジノ解禁でギャンブル依存症が増加するかも?

2014年06月22日 17:39

 昨年12月に、自民党、日本維新の会、生活の党の3党が共同で、カジノに関する法案を国会に提出した。同法案は、カジノを中心とした複合型リゾート(IR)の施設設備を推進するというもので、IR推進法案とも呼ばれている。これについて最近、政府内でも実現に向けた動きが出始めているようだ。今年5月末に、安倍首相がシンガポールのカジノを視察。また、6月10日には、菅義偉官房長官が記者会見でIR推進法について言及し、カジノ解禁によってもたらされる経済効果について、高い期待を抱いていることを明らかにした。

 PwCが2011年に発表したプレスリリースによると、世界のカジノの収益は15年には1,828億米ドルに達すると予測されている。また、09年に開業し11年には44億米ドルの収益をあげたシンガポールのカジノについても、15年には72億米ドルにまで収益を伸ばすだろうと予測している。

 年金問題や医療費による財政圧迫を抱える政府にとっても、カジノによる経済効果は十分魅力的だろう。観光業や地域産業を活性化させる要素もあると見られているカジノ。観光客の増加や雇用創出などが見込めるため、地方自治体の中でも、誘致活動を積極的に行っているところがあるようだ。 大阪府は20年に開かれる東京五輪に合わせて、大阪市此花区にある人工島「夢洲(ゆめしま)」にカジノを開業したい考えを表明している。長崎県も、佐世保市にあるハウステンボスに、カジノ施設の設置を目指しているらしい。

 しかしカジノ誘致には不安の声もある。懸念される問題として挙げられているのは、犯罪の増加、治安の悪化、青少年教育への影響などであるが、中でも、ギャンブル依存症の増加は特に心配だ。09年に厚生省が調査した内容によると、日本のギャンブル依存症患者数は成人人口の5.6%にも上るらしい。既にカジノを解禁しているマカオでさえ1.78%、アメリカでは0.6%であるというのに対し、日本は非常に高い割合だ。カジノ解禁で、日本のギャンブル依存症患者がますます増加するなどということにはならないよう、さらに慎重な議論が必要となりそうだ。(編集担当:久保田雄城)