1998年、JAHB net(ジャーブネット)は「地域工務店・地元ビルダーたちの匠の技術を結集するネットワーク」をテーマに発足した。今年、16年目を迎える。同時に、そのJAHB netの基本であるアキュラシステム(AQS)は20周年を、そしてJAHB netを主宰する宮沢俊哉社長のアキュラホームは35周年を迎えたなかで、第15回JAHB net全国大会が開催された。
今年4月の消費増税によって、2013年度は9月までの住宅建設受注の駆け込み需要と、その後の落ち込みが当然ながら発生した。宮沢氏の示した資料によると大手ハウスメーカーなかには、駆け込み需要で前年比5割アップし、その後最大4割減となった企業もあるという。
ところが、地域密着型で紹介受注が多いJAHB net会員のビルダーは、「大きな駆け込み需要も無かったが、落ち込みも大きくない(宮沢氏)」という。アキュラホームの数字を参照すると、早めの対策が功を奏して今年4月から6月実績は前年比92.3%と回復傾向に動く。具体的な対策として挙げたのは、「経営資源の選択と集中だ」とし、受注が落ち込んでいるときには「総員営業」で凌ぐ習慣が活きたという。つまり、小規模工務店なら、受注が無ければ「職人も暇を活かして営業する」ということだと宮沢氏は語り、「血の通った組織を作り上げたから……」と笑みをもらす。
大会のシンポジウムでは、東京大学大学院の松村秀一教授が『木造住宅の未来つくり手の挑戦×住み手の変革』のメインテーマに沿った『「箱の産業」から「場の産業」への大転換』と題する講演などが公開された。そのなかで松村教授は「日本における住宅ストックは米国を上回っている」と指摘し、その豊かなストックを有効に活用するために住宅関連業界に転換期が訪れると語った。
シンポジウムに先駆けて宮沢社長がプレス発表の会場で、「住宅建設に従事する人間は、営業や設計者、職人や施行者にかかわらず、自分たちが建てた家の5年後、10年後をキチンと見つめるべきだ。そこで経年変化や傷み具合のチェックだけでなく、家族構成の変化、周辺環境の変容などに応じたリニューアルが必要だと感じたら、新たな提案を行なう。また、住まい手にも時代に応じた変革を求める。これが我々の目指す“現在の名棟梁の家作り”であり“永代家守り”だ」と語ったことと、松村教授の既存の「住宅ストックを活かすための転換期」という講演と符合すると感じたのは筆者だけではなかろう。
なお、アキュラホームでは6月1日に社内研究所として「アキュラホーム住生活研究所」を設立。住宅関連産業がフローから優良ストックの活用へ動くなか、つくり手と住まい手双方の立場から「住みごこち・住みごたえ・住みこなし推進研究会」など研究活動を行なう。所長にはアキュラホームの執行役員、京都大学工学部卒業で建設省や都市基盤整備公団研究所室長などのキャリアを持つ伊藤圭子氏が就く。(編集担当:吉田恒)