性別に違和感を覚える子どもたち 全国で606人

2014年07月09日 10:09

 2004年に施行された性同一性障害特例法によって、戸籍上の性別変更が認められるようになり、さらに今年5月には、医学界でも性別適合手術の安全性向上を目的とする治療指針の改定が提言されたばかりだ。性同一性障害に関する認知が進むとともに、社会的な動きもようやくみられるようになってきた。

 しかし、このような対応策が、現状に追い付いているとはとても言えない。「gid.jp 日本性同一性障害と共に生きる人々の会」は、性同一性障害特例法が20歳以上だけに対応する法令だということを問題とみて、20歳未満の特に学校生活を送る子どもを対象とした対策の必要性を訴えた。

 同会は、13年11月に文科省に「性同一性障害の児童生徒への対応に関する要望書」を提出。要望書の内容は、心の安定が難しい思春期という時期に、性同一性障害を理由に理不尽な扱いを受けたり、精神的に深く傷つけられる体験をすることで、不登校や自傷・自殺への衝動を抱くようになるなど、深刻な事態に繋がっていることを指摘。また、日本精神神経学会はホルモン治療を15歳から認めるなどして、成長期の性同一性障害の子どもの心理的負担を取り除く対応を実施しているが、教育機関での対応はまったく進展しておらず、逆に学校側からホルモン治療は行わないことという指導がなされた事例もあると訴えた。
 
 この要望書を受けて、文科省は12月に同会に回答し、全国で学校調査を実施して実態把握に努めるとともに、性同一性障害に関する対応指針をまとめていくことを伝えた。文科省はその翌月である14年1月に、全国の都道府県教育委員会などに向けて、国公私立や株式会社などが設ける小・中・高の学校、及び特別支援学校など、ほぼすべての学校を対象に、「性同一性障害に関わる対応に関する状況調査」を依頼した。調査対象の期間は13年4~12月の間で、学校側が把握する事例や状況に基づいて情報が収集される形となった。

 調査結果は6月に発表され、自分の性別に違和感を持っている生徒が、全国に少なくとも606人いるということが分かった。うち165人が性同一性障害の診断を受けている。文科省は今年中に学校教育機関に向けて、性同一性障害の子どもの対応に関する指針を作成していく方針だ。(編集担当:久保田雄城)