一度液状化した地盤は再液状化しやすい 対策未だ確立せず

2014年08月19日 08:46

画像・一度液状化した地盤は再液状化しやすい 対策未だ確立せず

東京都港区台場。埋め立て地は砂質土層であるため液状化が起こりやすいと指摘されている。液状化は地震によって引き起こされ、一度液状化した地盤は再液状化する可能性が高い。しかし既存の建造物に対する液状化対策は進んでいない。

 地盤工学を研究する芝浦工業大学の岡本敏郎教授は、地盤の液状化現象に対して現在有効と提案されている対策について検証を行った結果、既存建造物に適用が考えられている「周辺締切式」の効果が低いことを指摘した。

 液状化現象は1964年6月16日に起こった新潟地震や、95年1月17日の阪神・淡路大震災、2004年10月23日の新潟県中越地震、11年3月11日の東北地方太平洋沖地震で確認されている。液状化被害があったのは、信濃川流域や新潟空港、神戸ポートアイランド・六甲アイランドなどの河口や海辺の埋め立て地だ。また新潟県では水田や湖を埋め立てた場所でも発生しており、建物が傾き道路が沈下するなど、多大な被害をもたらした。

 液状化現象は地震と深く関連しており、土の中の砂が振動することによって引き起こされる。液状化が起こる原因には土の粒子の大きさや質が関わり、粘土質では発生しない。海岸や河口、埋立地、などの砂質土層で多く発生し、また池や水田跡でも引き起こされる。地下水位が地表近くにあった場合、地震のゆれによって砂粒の隙間が水で満たされ、泥水状態になる。地震が収まった後に砂粒が沈降し、上層部に残った水が地表面に噴出することで地盤が崩れてしまうのだ。

 現在、建物に対して有効とされている液状化対策には「直下壁式」と「周辺締切式」がある。直下壁式は壁式の杭を建物の真下に打ち、地下深くにある硬い地盤で建物を固定するというものだ。岡本教授は検証により直下壁式の有効性を認めたが、実施できるのは新築の建物に限られる。

 一方、周辺締切式は建物の回りの地盤を囲う形で壁式の杭を打つ方法だ。既存の建物対策として適用を考えられているが、建物の真下の液状化を防ぐことはできず沈下や傾斜が起こってしまうことが検証により明らかにされた。また、一度液状化した地盤は再び液状化する可能性が高く、こうした「再液状化」に対する対策は急務とされている。岡本教授は現時点での液状化対策の不十分さを課題として、今後も手法の開発に努めていくとしている。(編集担当:久保田雄城)