パナマとスエズ 国際運河の競争は世界の物流を変える

2014年08月27日 11:59

画像・パナマとスエズ 国際運河の競争は世界の物流を変える

太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河は15日、開通から100年を迎えた。大型船舶を通すための拡張工事が進んでおり、完成すれば北米大陸東岸から日本までの海上ルートは劇的に短縮される。これにより、シェールガスの日本への輸入も現実味を帯びる。

 太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河が8月15日、開通から100年を迎えた。パナマ運河は太平洋での勢力圏拡大を狙う米国が軍艦や商船を大西洋から振り向けられるよう計画。1914年に完成させ、軍事拠点として管理を続けたが99年末にパナマに返還。日本の船舶の運航数は米国、中国、チリに続いて4位。全長は約80キロ。通航には8~10時間、待ち時間を含めると24時間程度かかる。

 パナマ運河と並び2大国際運河と称されるのがエジプトのスエズ運河だ。海上貨物の競争が激化するに伴い、パナマとスエズの2大国際運河の競争は加熱している。パナマ運河の通航隻数は2013年度に1万3660隻と12年度から6.1%減少。スエズ運河(3.6%減)より減少幅は大きい。アジア地域で生産拠点の南下が進んだ影響で、海運会社などがスエズを利用した方が輸送距離が短くなると判断。パナマ運河の利用客がスエズに流れている。

 パナマ運河では大型船舶を通すための拡張工事が進んでおり、完成すれば北米産の液化天然ガス(LNG)などを運ぶ輸送船も通航できるようになる。工事が始まったのは7年前の07年9月。拡張が実現すれば、最大で幅49メートル(現在は32メートル)、全長366メートル(同294メートル)、喫水15メートル(同12メートル)の船舶が通れるようになる。現状よりも積載量が2.6倍程度多いコンテナ船も通航可能となり、世界の海運会社や荷主にとっては物流の効率が大幅に高まる。これまでは船が大き過ぎて運河を通れなかったLNG船や液化石油ガス(LPG)船も新たに通航できるようになる。

 日本から遠く離れた地球の裏側の出来事だが、その影響は計り知れない。運河利用による運航期間短縮は輸送費の圧縮というメリットに直接つながるからだ。現在はLNG船やLPG船は、北米からアフリカ大陸南端の喜望峰を回って日本に至るルート(所要約45日)を使っているが、パナマ運河を通れるようになれば、所要日数は約25日に短縮できるという。LNGのスポット用船料を1日1隻10万ドル(約1000万円)として単純計算すると、1回の輸送で約200万ドル(約2億円)が浮く計算になる。

 今後、北米東岸やメキシコ湾岸から「シェールガス」が日本に輸出されるようになれば、拡張後のパナマ運河が使われる見通しで、日本にとってパナマ運河拡張の利点は大きい。パナマとスエズ、2大国際運河の地球的規模の競争は世界の物流、エネルギー需給に大きな影響を及ぼす可能性がある。(編集担当:久保田雄城)