世界の風力発電市場は2020年には5兆1337億円に

2014年06月20日 12:05

 株式会社富士経済は、再生可能エネルギーのひとつとして普及が期待される風力発電とそのコンポーネントの市場を調査した。その結果を報告書「World Wide陸上/洋上風力発電市場の現状と将来展望2014」にまとめた。

 それによると、世界の風力発電市場は、2013年は容量は39.1GW、金額は4兆8390円が見込めるという。2020には容量は13年比24.6%増の48.7 GW、金額は同6.1%増の5兆1337億円と予測した。米国のPTC(風力発電の発電量に応じて税金を還付する制度)切れに伴う駆け込み需要がみられた2012年の反動もあり、2013年は縮小となるが、2014年以降は堅調に推移し拡大が予測されるという。

 エリア別には日本では、太陽光発電の適地が限られることから風力発電への期待が大きい。特に洋上風力発電は13年に実証が相次ぎ、14年にはFITが36円に設定されるなど立ち上がりに期待が高まっており、16年頃より市場が本格化すると予想される。また、陸上風力発電においてもFITによる需要の顕在化が予想される。現状の市場規模は小さいものの、従来はネックであった系統の整備が進み、大幅な拡大が期待されるとした。

 米国は、PTCよって市場が左右される。12年には翌年のPTC成立が危ぶまれたことから駆け込み需要が発生し市場が拡大した。13年は反動により縮小しており、今後もPTCの継続が不透明であることや、シェールガスによる割安なエネルギーの確保により長期的に市場は低迷すると予想されるとした。

 欧州では、陸上の適地が少なくなってきており、新たに洋上が期待されている。洋上風力発電ではイギリスに続いてドイツの市場が立ち上がっており、20年ごろにピークを迎えると予想される。一方、陸上風力発電は15年をピークに縮小が予想されるとした。

 中国では、これまで系統連系や稼働率が軽視されていたが、11年より系統連系可能なプロジェクトに対してのみ政府が許可を出す方針に転換したことから市場が停滞している。対応は徐々に進んでおり、13年には拡大に転じ、今後も産業振興、エネルギー自給率向上の観点から拡大が予想されるとした。

 世界的には、米国、欧州、中国の需要が若干の停滞を見せつつあるなか、インド、ブラジル、カナダ、メキシコ、トルコなどで需要が拡大しており、今後もFITの整備された国から風力発電の導入が進むと予想している。

 また、世界のコンポーネント市場は、13年は2兆7570億円を見込んでいる。20年は13年比3.1%増の2兆8419億円と予想している。風車の大型化による導入基数の減少や風力発電機メーカーの内製率の上昇、ギアレス設計による歯車や軸受機器の需要減少などにより、拡大は風力発電市場より緩やかになるとみられるという。風力発電機は発電機などを収納するナセル、ブレード・軸受・ハブを組み合わせたロータ、ナセルを支持するタワーで構成される。ナセルやロータは風力発電機メーカーの内製であるが、ナセル内のコンポーネントである発電機、コンバータ、軸受などは外部調達も多く、素材も含め日系メーカーが世界市場の中で健闘しているとした。

 発電機市場は、13年は誘導発電機が970億円を見込んでおり、20年は817億円と予想している。同期発電機は13年は710億円を見込んでおり、20年は1130億円と予想している。発電機は現在の主流は誘導発電機であるが、同期発電機は簡単な構造で信頼性が高く、出力力率の調整が可能で系統への影響がないことから、一台当たりの単価が高いものの導入が増加しているとした。

 同期発電機はVestas Wind System、GE Wind Energy、Siemens Wind Powerなどの風力発電機メーカーも採用を始めており、今後の市場拡大が予測される。誘導発電機は中国の風力発電機メーカーによる採用が続き、中国メーカーのシェア拡大に伴い一定の市場を確保すると予想されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)