三菱重工 船舶事業の改善の一手となるか エンジニア事業で欧州企業と協業

2014年02月16日 12:02

 三菱重工<7011>は、デンマークのオデンセ・マリタイム・テクノロジー社(OMT)と船舶エンジニアリング事業で協業することを発表した。造船分野で豊富なノウハウを有する両社の協業により、多様な船種のデザインを迅速に開発し両社のライセンス事業を拡大していくという狙いで、三菱重工の船舶・海洋事業の収益を改善する一手として期待される。

 三菱重工が主に推進性能面の開発を担当し船型のデザイン、モデル試験、省エネ装置やプロペラの開発などを行う。OMTは、主に三菱重工が開発した船型に基づく概念設計や基本設計を担当する。両社が豊富な経験を有するコンテナ船をはじめ、バルクキャリアや中小型液化ガス(LNG)運搬船の開発も計画に含まれる。OMTは、中国市場で評価の高いバルクキャリアのデザインも保有しており、これに三菱重工が開発した船型や省エネ装置、プロペラを採用することで、より高い性能を持つデザインとすることを目指すとしている。

 この協業の背景には、日本の造船業界が置かれている厳しい経営環境がある。これまで世界の造船市場をリードしてきた日本の造船業では、低価格を武器にした韓国や中国の造船業の台頭により、2014年度は新たに造る船がなくなるといわれるほど受注量の激減が予想されている。12年後半から続く円安の中、米国シェールガスの輸入にともなうLNG運搬船の需要増加が期待され、同船の実績も多く技術力の高い日本の造船業には業況回復の好機が到来しているが、韓国メーカーもLNG運搬船への攻勢を強めており、悠長に構えていられる状況ではない。

 現在、日本の造船業は生き残りかけて業界再編などに取り組んでいる。IHIは13年1月に造船部門の子会社をJFE系の造船会社と統合させ、ジャパン マリンユナイテッド(JMU)を設立。また、IHIは同年6月に日揮やJMUとで、ブラジル最大級の造船所に25%の出資を決めた。川崎重工と三井造船では、水面下で進めていた経営統合が破談になったが、その後両社はLNG運搬船の共同受注などでの提携の動きも見せている。常石造船、大島造船所、新来島どっく、サノヤス造船の専業4社は同年7月に船舶の    設計、建造技術や海洋エネルギーの利用技術などの研究開発を行う目的でマリタイムイノベーションジャパンを発足させ競争力の強化を図っている。
 
 三菱重工も13年4月に今治造船との共同出資でLNG運搬船を設計・販売するMILNGカンパニーを発足させ、同船の需要増への対応力や技術力を強化している。同社は、コスト競争力のある中韓メーカーとの競合を避け、LNG運搬船、大型客船や海底資源探査船などの高い技術力が必要とされる高付加価値船へと軸足を移すとともに、競争力の低下した船舶技術の外販や技術供与などによるエンジニアリング事業のてこ入れも進めている。今回のOMTとの協業もその戦略の一環であり、船舶事業の収益改善だけでなく成長戦略の一手としての意味もある。(編集担当:久保田雄城)