9月14日、MotoGPサンマリノGPがミサノワールドサーキット・マルコ・シモンチェリで開催された。マルコ・シモンチェリは全長4,226m。加減速を繰り返すタイトなサーキットで、コーナリングがレースのカギを握る。マシンの性能はもちろんだが、ライダーの技量が大きく問われるコースだ。
また、マルコ・シモンチェリはバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)の実家のすぐ近くに位置しており、スタンドは地元ファンによってロッシカラーのイエロー一色となった。
このサンマリノGPは、予選から今までとは大きく違った展開となった。まず、予選で一番時計を出したのは、ホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)。3番グリッドにはV・ロッシがつけた。今季これまで絶好調独走状態のレプソルホンダ勢は、マルク・マルケスが4番グリッド、ダニ・ペドロサが5番グリッド。M・マルケスは今季初めてフロントローを逃し、今週はヤマハ・ドゥカティの好調が目立っていた。
地元ロッシとイタリアメーカーであるドゥカティの好調ぶりで、レース前から観客は熱狂。今までにない期待と興奮の中、決勝を迎えることになった。
抜けるような青空の下行われた決勝のコンディションは、気温26℃・路面温度は38℃。好スタートを切ってホールショットを決めたのは、ポールポジションスタートのJ・ロレンソだった。2位にはV・ロッシがぴたりとつけ、3番手には4番手スタートのM・マルケスが浮上。
レース序盤は、この上位3名が激しいデットヒートを繰り広げる展開となった。特にV・ロッシとM・マルケスの2番手争いはし烈で、接触ギリギリのバトルが随所で見られた。この隙に差を広げたいJ・ロレンソだったが、4周目に一瞬の隙をつかれてV・ロッシ、M・マルケスにかわされ、3位に転落。6周目には、トップのV・ロッシと2番手につけたM・マルケスから徐々に遅れ始めた。
激しいトップ争いを繰り広げていたV・ロッシとM・マルケスだが、10周目にレースが大きく動いた。ぎりぎりで2番手につけていたM・マルケスが、まさかの転倒。今季抜群の速さと安定感を見せていたM・マルケスが今までは考えられないようなミスを犯した。
しかも、転倒後にエンジンがかからないというトラブルに見舞われ、再スタートを切ることはできたが、最後尾からの追い上げを余儀なくされた。このらしからぬ転倒によって、M・マルケスは上位争いから早々に姿を消してしまった。
2番手に浮上したJ・ロレンソはV・ロッシを追ったものの、差は縮まらず、安定したミスのない走りで速さを見せつけたV・ロッシが嬉しい今季初優勝を手にした。2位にはJ・ロレンソ、3位にはD・ペドロサが入り、今季初めて、ヤマハがワンツーフィニッシュを決めた。
4位にはD・ペドロサとの3位争いに僅かの差で敗れたアンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)、5位にはアンドレア・イアンノーネ(プラマックレーシング)といったドゥカティ勢が入った。
また、転倒によって最後尾に転落したM・マルケスだが、猛烈な追い上げを見せて15位でゴール。1ポイントを獲得し、今季独走するポイントリーダーとしての意地を見せた。
今季13戦目のサンマリノGPになって大きく動いたMotoGP。ヤマハが完全にホンダを封じて完勝したのは今季初めて。今まではレプソルホンダが圧倒的な強さで独走していたが、13戦目にしてその牙城を完全に崩した。
さらに、今季遅れをとっていたドゥカティ勢もホンダ・ヤマハと互角のペースでレースを展開できることを証明した。ホンダ独り勝ちの状態が今季初めて大きく揺らいだ。
今季好調を維持していたV・ロッシだが、M・マルケスの好調ぶりもあり、優勝からは遠ざかっていた。今回の優勝は昨年のオランダGP以来。しかも、地元での5年ぶりの完全勝利でモチベーションはさらに高まる。今後ヤマハ勢・ドゥカティ勢が波に乗る可能性は高く、そうなるとホンダ勢にとっては厳しい戦いになることが予想される。
だが、M・マルケスのアドバンテージは依然としてかなり大きい。今季の総合優勝はもうほぼ間違いなしと言ってもいい状況だが、それでもまだ安心はできない。好調のV・ロッシとM・マルケスのポイント差は75ポイント、チームメイトD・ペドロサとの差は74ポイント。M・マルケスがこのまま低迷すれば、大逆転もあり得る。
今季終盤に差し掛かって、波乱の展開が巻き起こっているMotoGP。残り5戦では何が起こるかわからない。
次戦は9月28日に行われるアラゴンGP。2009年に開業したモーターランド・アラゴンで開催される。昨年はM・マルケスが優勝、2位にJ・ロレンソ、3位にV・ロッシという結果だったが、好調のヤマハ、大きなアドバンテージを持つホンダ、そしてドゥカティ、今季は誰が勝つのか。。
いずれにしても、M・マルケスの圧倒的優位に変わりは無いが、混戦が予想される終盤のMotoGPに目が離せなくなってきた。(編集担当:熊谷けい)