MotoGP第11戦チェコGP決勝が8月17日に、チェコ・ブルノサーキットで行われた。ブルノサーキットは5,403mと総距離は長いものの、ホームストレートは636mと短め。コース幅は15mとかなり広く、高低差のあるサーキットで抜きどころも多い。下りのパッシングではライダーのハンドリングが、上りではマシンの動力性が問われる非常にテクニカルなサーキットだ。
決勝は今にも雨が降り出しそうな不安定な曇天の中始まった。気温17℃、路面温度23℃と温度の低い状態で、雨の可能性もある難しいコンディション。そんな中タイヤチョイスで勝負に出たのがホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)だった。J・ロレンソは前輪のタイヤに温まりの良いソフトを選び、レース序盤でから勝負に出た。
また、予選では今季の特例レギュレーションにより、他のファクトリーチームによりも1ランク軟らかいタイヤを選べるドゥカティ勢が上位グリッドを獲得。ドゥカティ勢の躍進にも期待が高まった。
決勝スタート、ホールショットを決めたのはドゥカティ・サテライトチームのアンドレア・イアンノーネ(プラマックレーシング)だった。2番手には3番手スタートのアンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)がつけ、ポールポジションで、開幕11連勝の記録がかかるマルク・マルケス(レプソルホンダ)は4番手と出遅れた。
レース序盤は、目まぐるしく順位が変わる展開となり、2周目にはJ・ロレンソがトップに立った。5周目にはM・マルケスとA・イアンノーネの3番手争いで接触が見られるなど、各所で肉薄したバトルが繰り広げられ手に汗握る展開。
6周目には3周目から2番手につけていたD・ペドロサがJ・ロレンソを抜いてトップに立ち、7周目にはトップのD・ペドロサ、2番手J・ロレンソ、3番手M・マルケス、4番手バレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)という上位4人が抜け出す形となった。
ヤマハ・ホンダ勢の4人が抜け出す展開は珍しくないが、M・マルケスが前を追うことができないと言う展開は今季初めてのことだった。序盤3番手からトップを窺う形になったM・マルケスだが、今レースでは上位2人との差を詰められず、13周目にはV・ロッシに抜かれて4番手に後退。以後ペースが上がらずに、上位3人との差も詰められなかった。
このM・マルケスと対照的に、トップに立ったD・ペドロサは最後まで安定した走りを見せてトップでフィニッシュ。J・ロレンソはレース終盤でD・ペドロサにぎりぎりまで迫ったが僅かに届かず、0.410秒差の2位に終わった。
3位には堅実な走りを見せたV・ロッシが入り、M・マルケスはまさかの4位。連勝記録がストップしただけでなく、表彰台まで逃す結果となった。
また、レース終盤に激しい攻防を見せたA・イアンノーネとA・ドビツィオーゾの5番手争いはA・イアンノーネが制して5位、A・ドビツィオーゾが6位となった。
今季一番の注目となっていた「ストップ ザ マルケス」を達成したのは、チームメイトのD・ペドロサだった。第10戦まではいかなる状況でも圧倒的な速さと冷静さで安定した走りを見せてきたM・マルケスだったが、 今回のチェコGPで精細を欠き、MotoGP史上初となる開幕11連勝の記録を逃してしまった。前年のチャンピオンで今季は圧倒的な強さを見せているものの、まだ21歳と若く、今回の結果がM・マルケス最強・無敵の展開にどんな影響をもたらすのか興味深い。
またここ2戦はJ・ロレンソとV・ロッシのヤマハ勢の調子がいい。V・ロッシはプラクティスで小指を負傷するというアクシデントによってハンデを抱えながらの参戦だったが、それでも危なげなくM・マルケスをしっかりと抑えた。J・ロレンソも今季序盤は調子を落としていたが、最近になって復調し安定してきている。
さらに、チェコGPではドゥカティ勢の活躍も光った。ドゥカティはレースでは結果をまだ出せていないものの予選では速さを見せており、高位グリッドを獲得できるようになってきた。有利なレギュレーションを活かせば、決勝レースでもホンダ・ヤマハの2強に迫る可能性は十分にあると考えていい。
ついに連勝がストップしたM・マルケス。第11戦チェコGPは、M・マルケスにとっても、他のライダー・チームにとっても大きな分岐点となり、大きな変化を感じさせるレースとなった。
第12戦はシルバーストンサーキットで行われるイギリスGP。M・マルケスが以前のような圧倒的な強さを取り戻すことができるのか、それともその牙城を完全に崩すことができるのか、次戦は今後の展開を占う重要なレースになると見て間違いないだろう。(編集担当:熊谷けい)