【MotoGP第14戦)】 大波乱のアラゴンGP J・ロレンソが今季初優勝

2014年09月29日 12:58

アラゴンGP

表彰台のJ・ロレンソ

 9月28日、スペイン、バルセロナの南西約200kmにあるモーターランド・アラゴンのおいてMotoGP第14戦アラゴンGPの決勝が行われた。

 モーターランド・アラゴンは標高約300mの山間部に位置するサーキットだ。全長は5,078m、最長ストレートは968m、右コーナー7、左コーナー10。多彩なコーナーと高低差の激しいサーキットは、マシンの完成度が問われるMotoGP屈指の過酷なコースだ。

 今回のアラゴンGPはレース前から天気に悩まされた。午前中には雨と霧によってウォームアップが遅れ、Moto3クラスはレースの開始時間が大幅に遅れた。コンディションが非常に不安定なで、他のクラスでも転倒が相次ぐ中、MotoGPは決勝を迎えることになった。

 レース開始直前にはドライレース宣言がなされたものの、いつ雨が降り出してもおかしくない状況でMotoGP決勝はスタートした。

 この波乱含みのレースでホールショットを決めたのは予選2番手スタートのダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)だったが、すぐに3番手スタートのアンドレア・イアンノーネ(プラマックレーシング)にトップを奪われる。

 スタート直後は抜きつ抜かれつの熾烈な攻防がいたるところで繰り広げられ、順位が目まぐるしく変わる混戦となった。

 だが、2周目に入り、マルク・マルケス(レプソルホンダ)とデットヒートを展開していたA・イアンノーネが濡れた芝にタイヤを取られ、激しく転倒。マシンが大破し、スタートでの大健闘もむなしくレースを終えた。

 路面コンディションが万全でない中、序盤から波乱の展開となったがアラゴンGPだが、4周目には更なる波乱が待ち受けていた。4番手を走行中だったバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)が3番手のD・ペドロサのパスに失敗し、転倒コースアウト。前線のサンマリノGPで優勝し、今回も期待されていたV・ロッシだが、負傷によって早々にレースを終えてしまった。

 これによって1番手M・マルケス、2番手ホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)、3番手D・ペドロサのスペイン人3人がトップを争う展開になった。レース中盤はM・マルケスとJ・ロレンソがトップを取り合ったが、13周目に入り、雨がぱらぱらと落ち始める。

 17周目、残り7周の段階で雨が大降りになり始め、10番手走行中のアレイシ・エスパロガロ(NGMフォワードレーシング)を筆頭に、雨用マシンへの乗り換えのために各ライダーが続々とピットイン。だが、先頭集団はそのままレースを続行し、我慢の走りを続けることとなった。

 19周目にはアンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)が転倒。いつどこで転倒してもおかしくない危険なコンディションに、J・ロレンソはレース終盤の20周目でピットインを決断。

 レプソルホンダ勢はスリックタイヤのままレースを続けたが、20周目、残りわずか4周という時点で2番手走行中のD・ペドロサが激しく転倒してしまった。なんとか再スタートしたものの、14番手と大きく順位を落とした。

 スリックタイヤで我慢のレースを続けたトップのM・マルケスは21周目、路面にタイヤを取られてついに転倒。ピットに戻り雨用マシンに乗り換えて復帰したものの、D・ペドロサと同じく順位を大きく落とし、13番手でリスタートという悔しい展開となった。

 この今季一番の波乱となったレースを制したのは、始終安定した走りを見せ、状況をうまく判断したJ・ロレンソだった。2位には一番に雨用マシンに乗り換えたA・エスパロガロ、3位には最後の最後にA・エスパロガロを追い詰め、接触を恐れないプッシュを見せたカル・クラッチロー(ドゥカティ)が入り、マシンの乗り換えとそのタイミングがレースの勝敗を大きく分けた。

 今回のアラゴンGPでは、オープンカテゴリーのA・エスパロガロが2位に食い込み大躍進を見せるなど、表彰台はいつもとは違う顔ぶれとなった。

 日本人唯一のMotoGPライダーの青山博一も、今季ベストの8位でフィニッシュ。M・マルケスは13位、D・ペドロサは14位だった。

 今季初めて表彰台を逃したレプソルホンダ勢。前半戦絶好調で総合優勝をほぼ確実にしているM・マルケスだが、2戦連続の転倒と調子は下降気味。また今季のレースで最も強気な勝負に出たD・ペドロサもいい結果は残せなかった。

 これに対して波に乗るのがヤマハ勢だ。ヤマハは2010年にアラゴンGPが行われて以降5回目にGPにして初めて、優勝をもぎ取った。前戦のサンマリノGPではV・ロッシが、アラゴンGPではJ・ロレンソが優勝し、2戦連続の優勝を決めて調子は上向き。V・ロッシの転倒は気になるところだが、レプソルホンダの一人勝ちに完全にストップをかけた。ドゥカティ勢も今季不調のC・クラッチローが表彰台を獲得するなど、レースの展開次第では上位を十分に狙えることを証明している。

 悪天候によって転倒者が相次ぎ、波乱の展開となった今回のアラゴンGPだが、今季一番の番狂わせに会場も興奮の渦に包まれた。

 次戦は10月12日。ツインリンクもてぎで行われる日本GPだ。この日本GPでM・マルケスがD・ペドロサ、V・ロッシよりも上位でゴールすれば、今季の総合優勝が決まる。M・マルケスが王手をかけた優勝を日本でもぎ取るのか、それとも今回のように劇的な展開が待ち受けるのか、勝負の日本GPからは目が離せない。(編集担当:熊谷けい)