左が、Wi-SUN通信用ロームグループのラピスセミコンダクタ製無線通信LSI「ML7396」にアンテナやハイスペックMCUを内蔵し、国内電波法認証取得も済ませた無線通信モジュール「BP35A1」だ。サイズは22.0×33.5×4.0mm。右は、ロームと台湾「Jorjin Technologies社」と共同で開発したUSBドングルタイプの無線通信モジュール「WSR35A1-00」。
京都の半導体メーカーロームは、2014年10月7~11日に千葉市の幕張メッセで開幕した「CEATEC JAPAN 2014」に出展し、Wi-SUN通信対応の特定小電力無線のための汎用モジュール「BP35A1」および、その評価キットの展示を行なった。
Wi-SUNは、国内のサブGHz帯のひとつである920MHz帯(サブGHz帯)などで使用される無線通信規格で、HEMS(Home Energy Management System/家庭内エネルギー管理システム)やBEMS(Building Energy Management System/ビル内エネルギー管理システム)の無線通信として普及が期待されている。920MHz帯を使った無線は、障害物に強く最適なスプールプットがあり、マルチホッピングに対応して、極めて高い省電力性を持ち、さらに電波干渉が少ないというメリットがある。
国内では、東京電力が昨年、東電サーバーとスマートメーター間の通信(通称Aルート)とは別に、スマートメーターと家屋内HEMSコントローラの間を結ぶ通信(通称Bルート)にWi-SUNを採用することを決定。他の国内電力会社でもBルートの通信手段にWi-SUNを用いることが有力視されている。東電はスマートメーターを2014年度中に同社管内で190万台設置、2015年には320万台の設置普及をめざす。将来的には都内だけでなく東電管内で2800万戸といわれる、すべての電気メーターが、用途切り替え時にスマートメーターに交換される予定だ。
今回展示された「BP35A1」は、今年1月にWi-SUNアライアンスのPHY認証を受けたロームグループのラピスセミコンダクタ製無線通信LSI「ML7396」ファミリーにアンテナやハイスペックMCUを内蔵し、MACアドレスを書き込み、送信パワーの調整も済ませた状態で出荷するオールインワンモジュール製品だ。もちろん、国内電波法認証取得も済ませた無線通信パーツである。
さらに、同社ではこの「BP35A1」を使った評価キットも用意。年明けの2015年1月から販売をスタートさせる。これは、BP35A1無線モジュール搭載にあたって必要なアダプターボード(BP35A7)とマザーボード(BP359C)、加えてコネクターや取り付けビスなどで構成する。これによって既存の家電製品などにもBP35A1無線モジュールを簡単に取り付けてWi-SUN通信の評価が簡便に行なえるというわけだ。これらは、ネット商社を通じて1個から購入でき、導入におけるコストも軽減できる。
また、ロームは台湾の組み込みモジュールメーカー「Jorjin Technologies社」と無線通信規格「Wi-SUN」に対応したUSBドングルタイプの無線通信モジュール「WSR35A1-00」を共同で開発した。既に2014年9月からサンプル出荷を開始し、ロームによると「需要に応じて、順次、量産対応を行う予定」としている。
ロームはこれまでも、前述のようにアンテナ内蔵で電波法認証取得済み、ファームウェア搭載済みなど、導入しやすい無線モジュールを開発してきた。が、「さらに導入を容易にするべく、通信モジュールの製造販売において高い実績を誇るJorjin社と共同開発を進めた」という。
開発したUSBドングルモジュールは、「BP35A1」を内蔵し、USB端子があるゲートウェイなどに簡単に後付けできるため、「さらに簡単にWi-SUN環境が構築できる」という。なお、両社では、ZigBee IP対応のファームウェアも準備しているという。(編集担当:吉田恒)