政府が年功序列の見直し提案 若年層への不公平を是正か

2014年10月22日 08:42

画・政府が年功序列の見直し提案 若年層への不公平を是正か

9月29日に開かれた「政労使会議」で安倍首相は年功序列に基づく賃金体系の見直しを提案した。若年層世代では勤続年数を重ねても安定した給与上昇が望めない状況にあり、年齢ではなく能力で賃金を決定すべきだという流れが強くなっている。

 政府と経済界、労働団体の代表らが集まって労働環境について意見交換をする「政労使会議」が9月29日に開かれ、年功序列の賃金体系の見直しについての提案が行われた。安倍首相は賃上げにより過去15年間で賃金が最高水準にまで上がっていることを評価しながらも、尚いっそう労働生産の向上を目指すには、年功序列に基づく賃金体系の見直しが必要だとした。安倍首相は「子育て世代の処遇改善のためにも成果で賃金を決定する方向へ移行していくべきだ」と考えを述べた。

 少子高齢化が進む日本では、年功序列の賃金制度が立ち行かなくなっていると指摘されている。少子化により企業の生産能力が低下することが予測されており、現在の若年層は勤続年数を経ても所得の上昇が見込めない。賃金が上がらないとなれば、住宅ローンなどの長期的な計画が立てにくくなり、消費支出を抑え込む傾向が強くなる。また年金問題も一向に解消されず、保険料の負担が増す一方であるのに対し支給額については不透明なままでは、現代の若者は将来に渡り経済的不安を抱えることになる。さらに、グローバル化が進む中、成果に見合った報酬が得られる能力主義が主流の海外へ、優秀な人材が流出してしまうことも懸念されている。

 デフレ脱却のためにも政府は、日本企業に長らく定着していた年功序列賃金制度を見直す必要があると考える。しかし、連合の古賀伸明会長は会合後の記者会見で「現在の日本企業の賃金体系は年功序列の見地からだけで成るものではない」と安倍首相の方針に批判的な姿勢を示した。「デフレから脱却するためにはまず何よりも個人消費が重要」とし、物価上昇に対し国民の所得が伸び悩んでいることを解消するためにさらなる賃上げが必要だとした。

 国際競争が激しい製造分野の企業では、すでに能力給制度に移行する動きが見られている。日立製作所<6501>は10月から国内の管理職社員約1万1,000人に対し、ポストや成果に応じて賃金を決定することを発表した。政府の年功序列賃金体系の見直しに、労働組合の反発は必至だが、時代の流れに応じて柔軟に対応していくことも必要だ。(編集担当:久保田雄城)