2014年の国内ITサービス市場は、システム構築需要に支えられて前年比2.8%増の5兆1720億円になる見通しだ。IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社は21日、国内ITサービス市場予測を発表した。これによると同市場は2013年末から2014年前半にかけてSI(System Integration)などシステム構築需要が好調に推移し、2014年の市場規模は5兆1720億円、前年比2.8%増の成長が見込まれるとしている。これは、同市場が2012年にプラス成長を回復して以来最も高い成長率だという。
国内景気の回復や既存システム/インフラの刷新などを背景に、国内ITサービス市場は成長を続けている。特に多くの国内企業にとっての2013年度下半期にあたる2013年10月から2014年3月にかけては大きく成長した。この結果、2013年の実績、および2014年の見通しとも、2014年2月に発表した前回予測に比べて上方修正となった。産業分野別にみると、政府/公共や金融業などで大型システムの再構築やシステム統合などの案件が多く見られた。システム別では、これらの大型案件に加え、クラウドへの移行、データセンターサービスの利用、ネットワークやセキュリティの強化、カスタムアプリケーション保守などへの支出が拡大した。
2014年後半以降も国内ITサービス市場は堅調に成長するものとみられ、同市場は2013年~2018年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)1.9%で推移し、2018年の市場規模は5兆5239億円になるものとIDCでは予測している。消費増税後の国内景気の先行き不透明感はあるものの、金融機関におけるシステム統合案件が継続するほか、「社会保障・税番号制度」にかかわる投資、クラウドやモビリティなど第3のプラットフォームにかかわる投資が市場のけん引役になるとみている。
しかし、堅調な成長を続けるとみられるものの、開発や運用の省力化/自動化やIT投資の海外シフトなど、構造変化に見舞われている。IDC Japan ITサービス/コミュニケーションズ グループディレクターの寄藤幸治氏は「中長期的にはシステム構築中心の市場成長は限界を迎え、構築したITシステムがいかに付加価値を生むことができるかが競争軸になる。国内ITサービスベンダー各社は、システムを『作る/運用する』だけではなく、作ったシステムがどのように顧客ビジネスに貢献するのかまでを含めた提案をし、その結果に対しても責任を負っていくべきである」と分析している。(編集担当:慶尾六郎)