国内製品別IT市場予測から読む戦略的IT投資の動向とは

2014年08月21日 12:28

画像・国内製品別IT市場予測から読む戦略的IT投資の動向とは

今後は、大企業を中心に戦略的IT投資の検討が進む一方で、そのノウハウをもった人材不足などが成長要因阻害する可能性が出てくる。この戦略的なIT投資を検討する人材の不足は、企業の投資を決定する上で、根本的な問題であるといえる。

 IT専門調査会社 IDC Japanは、8月8日2014年第1四半期の実績、および最新の景気動向などに基づき14年~18年の国内製品別IT市場予測を発表した。

 この調査結果によると、国内IT市場規模は、横ばいの14兆3,733億円(前年同期比0.1%増)。また、業種別市場規模に関しては、ハードウェア市場規模が、6兆6,144億円(同、2.0%減)、ITサービスは5兆872億円(同、1.6%増)、パッケージソフトウェア市場は、2兆6,717億円(同、3.0%増)と予測している。一方、本調査結果では、国内IT市場に、国内通信サービス市場を加えた国内ICT市場規模を、25兆3,833億円(同、0.6%減)と合わせて予測している。

 国内通信サービス市場を合わせた市場規模がマイナスに転じている大きな要因として、同社は、これまで国内IT市場をけん引してきた、スマートフォン市場がマイナス成長に転じるとしている。その一方で、昨年と同じ傾向として、Windows XPサポート終了に伴う、PCの更新需要が14年4月以降も継続し、IT市場規模の成長に寄与することから、全体で横ばいの成長率と予測している。

 同社は、このような国内IT市場動向をもとに、14年後半からは、国内IT投資は、第三のプラットフォームを軸とした、戦略的なIT投資に向かうと結論付けている。合わせて、本調査結果の中で、同社、ITスペンディング グループマネージャーの廣瀬弥生氏は「ITベンダーは、第3のプラットフォームに基づく戦略的IT投資について、人材に関する個々のユーザー企業の実情を踏まえた柔軟な提案が必要となる」とコメントしている。

 この分析にもあるように、今後は、大企業を中心に戦略的IT投資の検討が進む一方で、そのノウハウをもった人材不足などが成長要因阻害する可能性が出てくる。この戦略的なIT投資を検討する人材の不足は、企業の投資を決定する上で、根本的な問題であるといえる。これまで、日本企業はIT投資に関わる戦略的な人材を自社内で確保せずに、外部委託してきた事実がある。投資効率の側面から見ると、この方向性は間違ってはいないが、中長期的な企業成長の側面から考えると、社内人材に対して投資をしてこなかったツケが回ってきているようにもとらえられる。成長要因が少なくなってきた中で、いかに優秀な人材を確保するという量的側面と、社内で人材育成・開発をするという質的側面を企業として、考える時期に来ているのではないか。企業には、投資効率のみに目を向けた目先の収益性ではなく、中長期的な視野にたった戦略、人材開発を期待したい。そのような企業戦略こそが、今後の企業成長に寄与するものと信じている。(編集担当:久保田雄城)