遺伝子組み換え蚊でデング熱対策 ブラジルで実用化か

2014年10月28日 08:45

画・遺伝子組み換え蚊でデング熱対策 ブラジルで実用化か 

日本でも今年大流行したデング熱。英国のオキシテック社は、デング熱対策に遺伝子組み換え蚊を自然界に放つ研究を進めている。遺伝子組み換え蚊の子孫はたんぱく質を正常に作ることができないため、成虫になる前に死んでしまう。

 デング熱を媒介するネッタイシマカを遺伝子組み換えによって駆除する計画が、英国・オックスフォードにあるオキシテック(Oxitec)社によって進められている。その仕組みはこうだ。遺伝子を組み換えたオスの蚊を自然界に放ち、メスの蚊と交配させる。それによって生まれた子どもの蚊は、ある特定のたんぱく質を過剰に生産してしまうようプログラミングされており、正常に成長することができない。遺伝子組み換え蚊の子孫が成虫になる前に死んでしまうことで、個体数を激減させることができるというのだ。

 この研究はブラジル、マレーシア、カリブ海沿岸のケイマン諸島やパナマなど各地で、すでに実施されており、約4,000万匹以上の遺伝子組み換え蚊が放たれている。およそ半年間で9割の蚊を撲滅することに成功し、実験は着実に効果を上げているようだ。デング熱で多数の死者を出しているブラジルでは国も許可を出し、実用化に向けて販売計画も進んでいる。

 2013年度のブラジルでのデング熱感染者は140万人を超える。死者は600人以上となり、蚊対策は重大な問題だ。デング熱による症状は頭痛、筋肉痛、高熱などだが、デング出血熱に罹ると血管から血漿のもれが起こり、吐血や下血など重篤な状態に陥ってしまう。悪化するとショック症状により死亡してしまうおそれもあるが、未だ有効な治療薬は開発されておらず、対処療法に限られる。ブラジル政府は蚊の増加を防ぐために産卵場所となる水たまりを作らないよう住民に呼び掛け、空き缶・空き瓶や植木鉢の受け皿などに水を溜めないよう管理することを求めている。しかしこのような地道な努力では限界もあり、遺伝子組み換え蚊の導入が決定されたのだ。

 今年、日本でも東京代々木公園でデングウイルスを持つ蚊が確認された。蚊の対策には殺虫剤や虫よけスプレーなどが使用されているが、大きな効果を上げるには至っていない。遺伝子組み換え蚊による生態系への影響も懸念されるところだが、デング熱の恐ろしさを身に迫った問題として感じられるようになった今、日本でも導入が持ち上がるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)