2時間以内にがん遺伝子変異を検出 凸版の遺伝子解析システムとは

2014年10月27日 12:05

 抗がん剤の効果予測などのために、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルからがんの遺伝子変異の検出が行われている。これまでFFPEサンプルからDNAを分離し取り出す操作は、非常に煩雑であるとともに、劇物薬品の取り扱いも必要だった。このため熟練した技術が要求され、検査センターや一部の病院検査室で行われている。

 今回、凸版印刷<7911>はこのFFPEサンプルから直接DNAを分離して取り出し、かつ遺伝子検査までの全工程を自動化することに成功した。これにより、誰でも簡便に検査が行えるようになり、検査時間は、従来の方法と比較して約4分の1の約2時間と大幅に短縮される。また、がん患者検体を国内で多く保有される公益財団法人がん研究会有明病院(がん研有明)と共同で臨床検体を用いた同解析システムの実証試験を2014年10月下旬より実施する。

 この実証試験では、がん研有明が遺伝子解析を含む医学研究のために院内で使用することについて患者様より同意を得ている検体が使用される。この実証試験における検査は、すべてがん研有明において行われる。

 今回開発されたシステムは、凸版印刷は独立行政法人理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センターおよび、株式会社理研ジェネシスと共同で開発した全自動小型遺伝子型解析システムを応用し、がん組織の一般的な保存方法であるFFPEサンプルから、がん組織細胞の遺伝子変異を全自動で検出するシステムだ。このシステムでFFPEサンプルからのDNA抽出するプロセスや試薬など前処理工程を改良し、約2時間での全自動での解析を可能とした。

 新解析システムは、FFPEサンプルからダイレクトにDNA抽出するために専用のDNA精製カートリッジを搭載し遺伝子型の判定までを全自動で行う。また、遺伝子型の判定は独自のアルゴリズムを用いて全自動で行う。そのため、特別な知識や作業は必要なく、同じ検査を実施できる。サイズは、小型(幅510mm×奥行690mm×高さ510mm)で一般的な実験室・検査室環境でも使用可能なため、病院内への設置も容易だという。血液用および、精製DNA用の消耗品を使用することにより、同じ装置で血液および精製DNAからの遺伝子解析が可能である。
 
 凸版印刷は、今後も臨床現場でのニーズが高まっている解析困難な遺伝子検査、たとえば、血清中に存在する極微量のがん遺伝子の変異を検出できる全自動解析システムの研究開発にも着手していく方針だ。(編集担当:慶尾六郎)