ウェアラブル端末がスマホから独立するために必要なこと

2014年11月01日 19:37

ローム「SynapSensor」

電通国際情報サービスとラピスセミコンダクタが開発したIoTインフラ「SynapSensor」は、920MHz 帯無線通信とBluetooth Low Energy を用いて、様々なBLE端末を活用したセンサーネットワークの構築を実現する。

 昨年来、急速な普及と成長が見込まれている新しいICTトレンドの一つにウェアラブル端末がある。ウェアラブル、つまり腕時計やリストバンド、メガネ、指輪、衣服など、身につけて持ち歩く様々なものを端末化することである。スポーツやヘルスケア、エンターテインメントに至るまで、あらゆる分野での導入と活用が期待されている。

 すでに国内外の様々なメーカーから、腕時計型やリストバンド型などのウェアラブル端末が発売され、業務目的での利用も進みつつある。例えば、日本航空と野村総合研究所は2014年5月から米ホノルル国際空港でGoogle Glassを活用した機体整備の実証実験を行っている。Google Glassを利用することで、メールや電話を介さなくても遠隔地から整備スタッフへの連絡やサポートがリアルタイムで可能になるほか、ハンズフリー環境で作業を行えるようになることから、作業効率の向上が期待されている。

 もちろん、このような活用方法は飛行機整備の現場だけでなく、他の機器類の整備や製造の現場でも応用可能で、これから各業界でも導入が進むことは間違いないだろう。

 MM総研の調査によると、日本国内のウェアラブル端末市場は2013年度の40万台から2020年度には600万台を超える成長が見込まれており、米国では1500万台を超える規模になると予測されているが、それをさらに後押しするようなIoTインフラが電通国際情報サービス オープンイノベーション研究所とロームグループのラピスセミコンダクタによって開発され、大きな話題を呼んでいる。

 ウェアラブル端末の普及には、3つの大きな課題がある。1つは小型軽量化と高機能化の要件を満たすバッテリーの問題だ。ウェアラブル端末はログの蓄積も大きな目的となるため、バッテリーの持続時間や充電時間は重要な問題になる。2つめは個人の行動情報等、プライバシーに関わる取得データへの配慮だ。そして3つめに、普及への大きな鍵を握るのがウェアラブル端末単独でのインターネットへの接続という課題だ。現状、ウェアラブル端末でインターネットへ接続しようとする場合、その多くでスマートフォンを介した方式が採用されている。つまり、ワンクッションある状態なのだ。スマートフォンは今や多くの人が携帯しているし、ウェアラブル端末を利用するような人はスマホの所持率、使用率も高いと思われるが、それでもやはり、ダイレクトに?がるのとそうでないのでは大きな差がある。

 今回、電通国際情報サービス オープンイノベーション研究所とラピスセミコンダクタが開発した「SynapSensor」はBluetooth Low Energy(以下BLE)を使ったIoT向けのソリューションで、BLE搭載デバイスから発信されるビーコンを中継ユニットが認識し、そのデータを920MHz帯の無線ネットワークを介してサーバにあたるコネクタへ送るという仕組み。このシステムを利用すれば、ウェアラブル機器をスマートフォンなしでセンサーネットワーク端末にすることが可能となる。

 メリットはそれだけではない。ビーコンを常時発信しても消費電力の少ないBLEを使用することで端末の長時間駆動を実現し、さらには上位ネットワークに電波到達性やマルチホップへの適合性などに優れた920MHz帯は2.4GHz帯の干渉を受けないので、安定性も高く、大規模システムの構築にも適しているという。

 SynapSensorは今年の「CEATEC JAPAN 2014」のロームブースにてデモが行われ、業界関係者らの注目を集めた。応用次第で様々な種類の端末でセンサーネットワークを構築することが可能で、工場などの製造現場や医療、教育、など、あらゆる面での活用が期待できる。ウェアラブルを活かしたIoTソリューションが、いよいよ本格的に動き出した。(編集担当:藤原伊織)