エボラに救世主 日本のアビガンが世界を救う

2014年11月23日 19:04

 富士フイルムホールディングス<4901>は11月11日に中期経営計画説明会を開催し、エボラ出血熱に効果が期待されている抗インフルエンザ薬「アビガン」が、来年1月のあたりにフランスとギニアの政府の承認を受ける可能性が高いことを明らかにした。アビガンを開発したのは富士フイルム傘下の富山化学工業。エボラ出血熱の感染が拡大する中、緊急措置として「グローバル承認」が検討されており、認められれば本格的なエボラ出血熱対策に使用される見通しだ。現在ギニアでは60人程度を対象としたアビガンの治験が実施されており、その効果と安全性の確認は12月末までに終了する予定だ。

 今年9月19日、エボラ出血熱に感染したフランス人女性看護師に対し、フランス政府が実験的治癒としてアビガンの投与を認めた。女性看護師は国境なき医師団(MSF)のボランティアだったが、リベリアでエボラ出血熱に感染した。フランスに帰国後、パリ郊外の病院で治療を受けていたが、アビガンの効果により病状が回復した。10月4日にはフランスのトゥーレーヌ保健相が、女性の治癒と退院を発表。これまで治療法が確立されていなかったエボラ出血熱の有効な薬として国際社会に認知が広がった。

 アビガンはもともと、「タミフル」に代わる抗インフルエンザ治療薬として開発された。ウイルスが持つ遺伝子の複製を阻害して、体内での増殖を防ぐ特性がある。しかし米国で実施した臨床試験データが国内基準を満たしていなかったため、厚生労働省は「新型インフルエンザ」のための非常時治療薬として用法を限定し、今年3月に国内で承認を出した。市場に多く出回ることがないため、売上高が望めない状況だったが、エボラ出血熱への効果が動物実験で確認され、思わぬ転機が訪れたというわけだ。

 アビガンは錠剤であるため大量生産が可能で、保管しやすいという利点がある。富士フイルムは2万人分のアビガンをすでに準備しており、政府はWHOや各国の要請に応じて提供する方針を公表した。国際的な承認が下り次第アビガンを政府が買い取り、すぐに西アフリカ現地に輸送する予定で、また先進国からの備蓄分の依頼も来ているという。(編集担当:久保田雄城)