エコカー補助金打ち切り後、自動車業界は補助金依存症に?

2012年07月09日 11:00

 1回目のエコカー補助金の反動減は1年間続いた

 昨年12月から実施されている現行の「エコカー補助金」制度は、7月中に3000億円の予算枠を使い切り、その時点で打ち切られる見通しになっている。

 ユーザーが燃費などの環境基準に適合したエコカーの新車を購入して申請すると、登録車は10万円、軽自動車は7万円の補助を受けられるエコカー補助金は、現在のもので2回目になる。1回目は2009年4月に始まり、6000億円の予算枠を使い切って2010年9月に打ち切られた。2回目は最大25万円の大盤振る舞いこそなくなったが、予算枠が半分になったのと、軽自動車の補助金が5万円から7万円に増額されたため、1回目の18ヵ月の半分以下の8ヵ月で終了してしまう。

 自動車業界が恐れるのは、8月以降の国内新車販売台数の「反動減」である。

 1回目のエコカー補助金が打ち切られた2010年9月以降は、前年同月比で登録車が10月-26.7%、11月-30.7%、12月-28.3%、軽自動車が10月-16.2%、11月-15.9%、12月-11.4%と大きく落ち込んだ。前年同月比でようやくプラスに転じた月は登録車が2011年9月、軽自動車が同年10月で、トンネルを抜けるまで1年かかっている(データ:日本自動車販売協会連合会)。

 今年の8月、9月は、前年同月が1回目の反動減のトンネルの中だったので数字はそれほど落ち込まないかもしれないが、10月以降、特に前年同月に2回目が始まった12月以降は、大きく悪化すると予想される。1回目と同じ期間だとすると、2回目の反動減のトンネルは来年夏まで続くことになる。

 1回目のエコカー補助金以降、国内新車販売台数は「1年半のプラス-1年のマイナス-1年のプラス-1年のマイナス」という波動を描くことになる。トータルすると4年半でプラスが半年多いだけである。それは、1回目が2回目より予算が3000億円多い分、打ち切りまで長持ちしたおかげだ。

 補助金に依存すると働く者のモラール(勤労意欲)をそぐ

 エコカー補助金が環境にやさしいエコカーの普及に果たした役割は大きいが、結果的に新車販売台数を「山高ければ谷深し」にするようでは、景気対策の予算の使い方として果たして効果的と言えるだろうか?

 自動車メーカーや販売会社、関連業界で働く者にしてみれば、需要を先食いする「山」の時は時間外労働(あるいはサービス残業)もあり身体を壊しかねないほど忙しいのに、反動減の「谷」の時は収入減で生活が脅かされるだけでなく、リストラで雇用も脅かされる。自動車業界の要望があったとは言え、エコカー補助金のオン、オフに振り回されて、まるでジェットコースターのような労働環境の激変を体験させられるのは、決して望んだことではなかっただろう。

 それだけではない。自動車販売に政府の補助金に頼る構造が組み込まれてしまうのは、自動車業界で働く者のモラール(勤労意欲)にとって、決していいことではない。

 「環境にいいクルマを作れば売れる。エコカーが売れれば自分の生活も豊かになる」と言ってがんばるのが王道だとしたら、「2回目は政府が予算を半分にケチったからエコカー補助金はもう打ち切りか。これから反動減がきて自分の生活はどうなるんだ」とボヤくのは、どう見ても邪道だ。自助努力よりも「政府は何とかしてくれ」という”お上”への依存心のほうが強いのは、民間企業で働く者として健康的と言えるだろうか。だが、悲しいかな補助金がなければエコカーを買ってもらえないのが自動車の国内販売の現実なので、そんな方向に流れてしまうのもしかたないのかもしれない。

 自動車産業は補助金漬けの「第二の農業」になってもいいのか

 産業が政府の補助金漬けになって、そこで働く者のモラールがダウンして衰退の道をたどった好例が日本にはある。農業である。農政が「生産しなければ補助金を出す」という減反政策を推し進め、農業団体が政治家に圧力をかけて数々の補助金を”勝ち取った”結果、農家の勤労意欲はどうなったか。少なくとも、意欲的な生産者が創意工夫と自助努力で農業経営を大きく発展させたような例は、あまり出てこなかった。たいていの農家は「現状維持」でよしとした。

 もし、世界に冠たる日本の自動車産業がそんなことになったら、産業の活力は確実に失われる。「ハイブリッドカー」のような世界で称賛されるイノベーションはもう生まれなくなる。補助金漬けの「第二の農業」として、政府にすがってなんとか「現状維持」で生き延びさせてもらうような産業になる。それはかつての石炭産業など、衰退した産業がたどった道と同じだ。

 おそらく今後、反動減に苦しめられる自動車業界団体は3回目のエコカー補助金を政府に強く要望することになるだろう。たとえは悪いが、エコカー補助金は麻薬や覚醒剤と同じように、切れると反動減という「禁断症状」が出る。それがつらいからといちいち政府に無心していると、だんだんと補助金依存症に陥っていくだろう。それで、いいのだろうか。

 昔、「覚醒剤やめますか。それとも人間やめますか」というCMがあったが、自動車業界にはあえて、こう警告すべきだ。「補助金依存症やめますか。それとも日本の基幹産業やめますか」。