ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカという主要経済新興5ヶ国。ここ3~4年の急成長で、25年頃には経済規模において現先進国勢を上回るのではないかと期待されていたが、その快進撃にも陰りが見えてきた。
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカという主要経済新興5ヶ国「BRICS」。ここ3~4年の急成長で、2025年頃には経済規模において現先進国勢を上回るのではないかと期待されていたが、その快進撃にも陰りが見えてきた。中でも大きいのはブラジルとロシアの経済失速だ。
まずブラジルから見ていこう。9月には財政赤字が過去最高となり、11月にはレアルが最安値を更新。10月末の選挙で、ジルマ・ルセフ大統領が再選されたが、1期目で具体的な改革案を示せなかった大統領に対し、大胆な経済改革は難しいのでは、と国内外からの視線も冷ややかだ。10年には年7.5%もの成長率を見せていたブラジルだが、今年は1%を下回る見通しだ。主要輸出品である砂糖・大豆・鉄鉱石・石油などの、世界的な需要減退の影響が大きいと言える。特に、メインの輸出先である中国やEU自体の経済が減速しているため、回復には中々つながりそうにない。
一方、ロシア失速の最大の原因は、原油価格の急落にある。エネルギー輸出によって成長を続けてきたロシアにとって、原油価格低下の長期化は大ダメージだ。事実、ルーブルは原油の下がり始めた9~11月の間に約20%も下落してしまった。さらに、ウクライナ情勢を巡り、アメリカ・EUから経済制裁を受けたことが事態の悪化を招いている。西側諸国のエネルギー市場への介入が制限されている上、逆に手助けを得ることも出来ない状態だ。プーチン大統領の強硬な外交政策が、経済面で自国を苦しめる結果となっている。
ウクライナ情勢を巡りG8から弾かれたロシアは、BRICSでの結束を求めている。長く続いた西側諸国支配への反発心を原動力に、政治・経済の両面で発言権を高めていこうという狙いだ。しかし、前述したようにブラジル・ロシアは自国経済の停滞に苦しみ、中国やインドも一時ほどの勢いはなくなってきている。各国の規模がなまじ大き過ぎるだけに、リーダーシップをどの国がとるのか、西側諸国へのカウンター以外に明確な結束意義を見出せるのか、という所でもまだ意志が見えにくい。
BRICSは華やかな成長期を経て、過渡期に入ったと言えるだろう。成長鈍化の他にも、各国とも急成長のツケとして顕在化してきた格差是正や税制問題、環境問題などにも取り組まなくてはならない。新興国が本当に世界経済を牽引できる存在になれるかどうかは、ここからが正念場だ。(編集担当:久保田雄城)