ニューヨーク市では、約10000台にのぼる公衆電話ボックスを無料Wi-Fiアクセス・充電のできるスポットしようという「LinkNYC」計画が進んでいる。日本の電話ボックスとは一味違うレトロな雰囲気は、長く愛された街のシンボルでもある。有効利用に期待したい。
ニューヨーク市では、現在「LinkNYC」という計画が進んでいる。これは、市内約10000台にのぼる公衆電話ボックスを無料Wi-Fiアクセス・充電のできるスポットにしようというものだ。その他にも同計画には、市内無料通話サービスなども盛り込まれている。
ニューヨークには古くなった電話ボックスが多い。景観的には懐かしいというか、90年代頃までのニューヨークの雰囲気を感じさせてくれるが、モバイルが当たり前となった21世紀においては、行政としては使い道に困っていた部分が大きい。そこで2012年にまず10ヶ所の公衆電話ボックスを実験的に公衆Wi-Fi化、翌13年には電話ボックスのデザインや用途の見直し案を公募し、今回の「LinkNYC」計画につながった。また、納税者に負担をかけないよう、計画の費用は今後12年間かけて広告料でまかなう予定だという。通信機能の詳細などは追って発表される見通しで、サービス開始は15年中が予定されている。
一方で、こうした公衆Wi-Fi化の動きは、携帯会社側からはデータ通信使用サービス契約が減少し、減益につながるとの懸念も出てきている。アメリカの調査会社によれば、Wi-Fiを積極利用しているユーザーは、通信サービスの節約により月に約30ドル(約3500円)節約ができているとのデータもある。
場所によってのネットワークの不安定さや、セキュリティ面での不安から、アメリカでもまだ完全にWi-Fiに乗り換えるという人は少ないものの、確実にその数は増えていっている。セキュリティ面などの改善が進めば、今後5~6年の間にアメリカのほとんどの消費者がLTEサービスから完全にWi-Fiへ移行するのではないかとの予想もある。
翻って、日本の公衆Wi-Fi化についてもみてみよう。最近では、この11月から名古屋市交通局が地下鉄車内における公衆無線LANサービスの開始を発表した。すでにアンテナの設置は始まっており、来年3月までに全車両への設置を予定しているという。また、面白い試みとしては、北九州市・下関市が合同で、Wi-Fi機能付き自動販売機を13ヶ所に設置した。こちらは、増加する海外からの観光客へのアピールといった狙いもあるようだ。
日米ともに、公衆Wi-Fi網の推進には、主要都市・自治体が積極性を持って行っている場合が多い。市民の生活向上だけでなく、観光面などを踏まえ、世界都市のアピールとして、ネットワークの公共性は大きな基準となりつつあると言えるだろう。(編集担当:久保田雄城)