九州電力<9508>の川内原子力発電所(鹿児島県)1号機、2号機に続き、先日、関西電力<9503>の高浜原子力発電所(福井県)3号機、4号機に対しても原子力規制委員会は、再稼働に必要な安全対策の基準を満たしているとする「審査書案」を了承したが、その一方で東京電力<9501>の柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)ついては原子力規制委員会の適合性審査が続いており、収益改善の柱ともいえるこの柏崎刈羽原子力発電所を東京電力は、従来の計画であれば今年の7月から順次稼働を再開させるつもりであったが、事は計画通りに進行しているとは言い難く、遅れをみせている。
しかしそうしたなか、東京電力は17日、2015年3月期連結決算の経常利益が前期比2.2倍の2270億円になるとの見通しを発表。この見通しの修正はコスト削減額が当初目標としていた5761億円から約2600億円増え、8370億円となる見込みとなったためで、これにより2期連続での黒字を確保する可能性が高まった。そして東京電力は2期連続での黒字確保の可能性が高まったことから、15年度中の電気料金の再値上げは見送るとの方針も示した。
7月に想定していた柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の遅れにともない、東京電力は9月に外部の有識者を交えた「生産性倍増委員会」を設置。それにより火力発電所の定期点検日数の短縮化でもって発送電設備の保守効率を高めたり、燃料調達費を抑えるなどのコスト削減策の検討を行っていた。そして政府が今年1月に認定した総合特別事業計画(再建計画)にて目標として掲げていた13~22年度の累計のコスト削減額を4兆8215億円から、少なくとも6000億円上積みし、6兆円に近づけたいとの方針も示した。
ただし原子力発電所の稼働停止にともない、15年3月期の火力発電向けの燃料費や購入電力などのコストは、再建計画よりも1120億円増加する。東京電力はコスト増加分を修繕費1220億円カットなどの策で乗り切ってはいるが、まだまだ健全な経営状態にはほど遠い。そのため東京電力は原子力発電慮の再稼働がなければ経営の黒字化の見通しは立たないとし、そのためには原子力発電所の再稼働が必要との考えを示している。(編集担当:滝川幸平)