東京五輪決定時までは、汚染水問題は大きく取り上げられてきたが、安倍首相が「完全にブロックできている」と発言して以降は、報道でも取り上げられることが少なくなっている。しかし、多くの国民が懸念するように、汚染水対策はいまだ困難な状況にある。
GDPの2期連続マイナス、衆議院解散、消費税増税先送りなど、政局をめぐり混乱が続いているが、その裏で福島第1原発の汚染水に関しても重大なニュースが飛び込んできた。福島第1原発2号機原子炉建屋・タービン建屋と、トレンチと呼ばれる配管などを通す地下トンネルの間が止水できていないことが分かり、このままでは凍土壁の建設が進まない状態となっているのだ。
東京五輪決定時までは、汚染水問題は大きく取り上げられてきたが、安倍首相が「完全にブロックできている」と発言して以降は、報道でも取り上げられることが少なくなっている。しかし、多くの国民が懸念するように、汚染水対策はいまだ困難な状況にある。
2014年6月から、東電<9501>は原子炉建屋をぐるりと囲む凍土遮水壁の建設作業に取り掛かった。凍土壁の目的は汚染水の海洋流出を防ぐことと、そして地下水を外から流入させ、新たな汚染水が増え続ける現状をストップさせることだ。計画としては、まず建屋と海の間に配管などを通すトンネルであるトレンチの接合部を凍らせて止水し、トレンチ内を流れている汚染水を抜いた上で、凍土壁を建設する予定だった。しかし、いきなり接合部の止水でつまずいた格好だ。
凍土壁建設の難航だけでなく、東芝<6502>の開発した汚染水浄化システムであるALPS(アルプス)も思うように稼働できていない状態が続いている。3月にはフィルターの不具合で、浄化を行っても放射性物質の濃度が下がらず、復旧までにはそこから3ヶ月を要した。保管タンク内の汚染水は現在約36万トン。さらに、今も1日約400トン近いペースで汚染水は増え続けている。現在設置されている3基のALPSをフル稼働させても、1日に浄化できるのは2000トンに満たない。流出防止作業だけでなく、浄化作業もいまだ先が見えない状況だ。
作業が杜撰だ、東電の不手際だ、と責めたい訳ではない。現場で作業に当たっておられる方々は、危険を顧みず、知識も体力も総動員して計画を進められていると思う。しかし、それでも想定外のトラブルが連続して起こるような、大変な状態に今もあるということを伝えたい。安倍首相の「完全にブロックできている」発言や東京五輪決定以降も、汚染水問題は確実に存在し、やっと今取り掛かり始めたところなのだ。こうした問題を見て見ぬ振りしたままで、大義の見えない解散選挙に向かう政治家たち。この国はどこへ行くのだろうか。(編集担当:久保田雄城)