「老後にゆったりした生活が送れるのだろうか」。こうした不安を抱いているビジネスマンも少なくないだろう。日本経済新聞に老後の生活を考えるなら、妻の働きがポイントだと指摘した記事が出ている。
同紙によると、もしも妻の年収がゼロだとすると、夫の退職後、貯蓄がマイナスになってしまう時期が早まってくる。貯蓄がなくなる頃に働き出すのは遅い。夫が退職する前に妻が働き出し、貯蓄がマイナスになるのを少しでも先延ばしにしようというのだ。確かに老後の不安は少なくなるだろうが、そんなにうまく行くのだろうか。
妻の稼ぐ金額にもよるが、夫の扶養範囲内で働き、配偶者控除を受けられ、さらに老後の貯蓄が増えるなら、働いている女性がもっと多いはずだ。しかし実際はそうではない。
それは子育て、家事、介護など無報酬で働かなくてはならない、いわゆる「アンペイドワーク」の大半を女性が担っていることに一因があるのではないだろうか。内閣府の調べによると、6歳未満の子供を持つ夫の家事、育児時間は1時間程度である。それに対し女性は8時間近く費やしているのである。子供の世話に手間がかからなくなっても、親の介護の問題がある。厚生労働省の平成22年の調査によると、介護の担い手の7割近くが女性であり、被介護者の娘、もしくは息子の妻だと言われている。もしもこのようなアンペイドワークが分散されず家庭内の女性に課されている状態が続くならば、一体いつ働きに出て、夫の貯蓄をカバーできるくらいの年収を作り出せばいいのだろうか。
また従業員を雇う側の企業も、小さな子供がいる女性や介護が必要な高齢者の面倒を見ている女性を敬遠する場合がある。子供や高齢者の急な容態の変化により休みを取り、業務内容に支障が出てしまうからだ。「女性は育児、家事、介護に専念すべき」という考え方を、企業を含めた社会全体で強化してしまっているのである。
老後に夫の貯蓄がなく、ゆとりを持って暮らせないのは、妻が働かず年収がないということだけではなく、「正規雇用の健康な男性だけが働ける社会システム」に寄りかかり過ぎ、その他の部分を考えてこなかったこともあるのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)