在宅介護希望者43.1%でも難しくなる在宅介護

2014年09月25日 13:55

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厚生労働省が8月29日に、高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書を発表。その結果によると、今後10年間で自宅の周辺に増えてほしい介護施設で最も多かったのは、「訪問介護・看護サービスを提供する事業所」で49.1%となった。

 厚生労働省が8月29日に、高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書を発表した。その結果によると、今後10年間で自宅の周辺に増えてほしい介護施設で最も多かったのは、「訪問介護・看護サービスを提供する事業所」で49.1%だった。また、介護が必要となった場合に生活をしたい場所では、「在宅」を希望する人が43.1%で最多となった。

 しかし現在、その在宅での介護が難しくなっている。その原因の1つが、介護の現場での深刻な人手不足だ。厚生労働省介護労働安定センターの2013年度の調査によると56.5%の事業所が従業員の不足感を感じている。また団塊の世代が75歳以上となる25年までに後100万人の介護従事者が必要だという試算もある。在宅での介護を望んでも、介護をする人材が不足しているため希望が叶わない可能性があるのだ。そのため政府は、消費税が8%に増税になったタイミングで0.63%引き上げた。さらに10%に増税された際は、さらに介護報酬を引き上げることを検討している。介護福祉士の待遇を改善し、介護業界の人手不足を解消する狙いだ。

 だが問題はこれだけではない。先の高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書によると、老後の生活のイメージとして「年金を受給する生活」を思い浮かべる割合が54.0%となり、65歳以上の80%弱が公的年金を最も頼りにしている結果となった。一方で、介護保険を運用する財源が不足し、65歳以上の人が支払う保険料は上がり続けている。また要介護度の度合いにより受けられる介護サービスに差があるため、本当に必要なサービスを受けるべき人が受けられていない等の問題もある。つまり現在の介護の実情として、少ない公的年金で上がり続ける保険料を負担した結果、必要なサービスを受けられないという悪循環に陥っているのだ。

 それでは誰が介護の負担を引き受けるのだろうか。同調査報告書で、高齢者と現役世代の負担水準に関する考え方の面白いデータがある。それによると全世代で50代が一番多く高齢者の負担を増やすべきであると回答した一方で、70代では現役世代の負担を増やすべきであるとの回答が一番多くなった。責任をたらい回しにしている間に、来年全ての団塊の世代が65歳以上となる。この国のあり方が今問われている。(編集担当:久保田雄城)