「大納会が最高値」の末広がりで仕事納め

2012年12月28日 21:44

 28日は1年の最終取引日の「大納会」。1月3日までの6連休前で利益確定売りも、月末、年末のドレッシング買いもある。為替レートは朝方、ドル円86円台半ば、ユーロ円114円台半ばと円安がさらに進行した。年末年始に海外旅行に行く人は嘆いても、日本経済は喜ぶ。NYダウは18ドル安で4日続落したが、日経平均始値は83.38円高の10406.36円で4連騰。「株価の日米連動」など、どこかに飛んでいってしまった。

 午前8時50分は国内の経済統計の発表ラッシュだった。鉱工業生産指数は市場予測を大きく下回る1.7%低下だが12月予測は6.7%上昇。完全失業率は4.1%で0.1ポイント改善し有効求人倍率は0.80で変わらず。消費者物価指数(CPI)はマイナス0.1%と下落したが市場予測通り。家計消費は前年同月比プラス0.2%で、個人消費の底堅さはポジティブ要素になる。少しは明るさも見え、それが円安とともに日経平均始値を10400円台に押し上げたようだ。

 前場の日経平均は10400円を少し下回る水準で小動きだが、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回ってTOPIXが前日比マイナスになりかける場面もあり、利益確定売り勢力は元気に動いていた。兜町には、年を越しても上昇確実な「縁起物銘柄」を大納会で買い、ご祝儀買いが入る正月明けの大発会の初売りで儲けを出して新年の縁起をかつぐ「株を枕に年越し」「株を枕に初夢」という風習が昔からある。来年はヘビ年だから蛇の目ミシン が値上がり率ランキング2位に入るなど大納会らしいシャレっ気も健在。だが今年に限っては年末に株価が急騰し、アメリカの財政の崖問題の先行きが不透明でヨーロッパ発のサプライズも怖く、例年より長い休みの間に円高に戻る恐れもあり。下手をすると城ならぬ株を枕に討ち死にしかねないので、年末にきっぱり手じまいする利食い売りが増えていたようだ。

 それでもドレッシング買い勢力は日経平均寄与度の高い銘柄、すなわち「急所」狙い撃ちで買ってくるので、日経平均は崩れない。終値は、「御三家」のファーストリテイリング<9983>は570円高、ファナック<6954>は190円高、ソフトバンク<9984>は25円安、「準御三家」のキヤノン<7751>は70円高、信越化学<4063>は90円高、トヨタ<7203>は75円高で約3年ぶりに4000円台回復、ホンダ<7267>は35円高、京セラ<6971>は60円高。それら「急所」の8社で日経平均を43円押し上げた。

 金融株や証券株は今日も強く、みずほ<8411>、三菱UFJ<8306>、12日連騰の野村HD<8604>、オリコ<8585>、アイフル<8515>が売買高、売買代金ランキングを賑わせた。東芝<6502>やソニー<6758>など電機株も好調で、シャープ<6753>も上昇。自動車株も買われた。一方、利益確定売りの犠牲になったのは三井不動産<8801>や東京建物<8804>や、東京電力<9501>、関西電力<9503> など電力株、12月に上げ続けた海運株、建設株だった。

 後場に入ると一段高で10400円台で推移するようになり、このまま終わるかと思いきや、利益確定売り勢力は午後3時の大引け間際に大逆襲。最後に10400円を割らせ、ローソク足を白から黒に塗り替えた。とはいえ終値は72.20円高の10395.18円で、1月4日の大発会から23%上昇して13年ぶりに大納会で終値最高値をつけた。売買代金は1兆4746億円で、大納会の1兆円越えは5年ぶりである。

 「利益確定売り対ドレッシング買い」の年末最終決戦は、「急所攻撃」でポイントを稼ぐドレッシング買い勢力に対し、利益確定売り勢力が土壇場で意地を見せた。急所攻撃の反則技など使わなくても五輪三連覇を達成し国民栄誉賞を受賞した吉田沙保里選手が大納会セレモニーのゲスト。東証の斉藤社長は「掉尾の一振でした」と末広がりを喜び、吉田選手が鐘を5回叩いて、最後に全員で手締めを行って2012年の取引を締めくくった。(編集担当:寺尾淳)