年末年始で旅行など、家を空ける機会が増えてくると心配になるのが、空き巣を代表とする侵入窃盗。警察庁の統計資料によると、その認知件数は平成10年以降急増し、14年にはピークを迎えたが、以降減少を続け、昨年は12万6079件とピーク時の半分以下となった。しかし、時間に換算すると約4分に1件起きており、これからの時期は特に防犯対策にも目を向けなくてはならない。
侵入窃盗の7割を占めると言われる空き巣の手口でよく知られているのが、ピッキングとサムターン回しという手口だが、こちらは現在では激減している。これは、平成14年に警察庁、国土交通省、経済産業省と日本ロック工業会をはじめとする建物部品関連の民間団体によって「防犯性の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」が設置されたことが大いに関係している。そして、同会議により平成16年には「CPマーク」というシンボルも作られ、前年に決定された「防犯性の高い建物部品」の試験基準をクリアした製品にこのマークが付けられるようになったことで、同手口はますます減少していった。
このふたつの手口に変わって、現在侵入手口で多いのが“ガラス破り”と“無施錠狙い”だ。今年上期の侵入手段としても戸建住宅では“ガラス破り”が40%弱、“無施錠狙い”が約45%、4階建て以上の集合住宅では“ガラス破り”が約25%、“無施錠狙い”が約40%と、侵入手口の主流となっている。また、侵入窃盗は空き巣だけではなく「忍び込み」や「居空き」もあり、こちらは在宅者の就寝時や隙を狙った手口ということで、犯人との遭遇の危険性もある。
このような変化していく侵入窃盗犯罪に対し、住居そのものを犯罪が起こりにくくするという考え方は、住宅メーカーはもちろん地方自治体でも進んでいる。
大阪府では防犯協会を中心に平成13年から「モデルマンション登録制度」を設け、4階建て以上の集合住宅について、推薦を受けた一級建築士と防犯整備士が行う審査を通過した同住宅を防犯モデルマンションとして登録している。これまでに900件以上を登録しており、高い評価を得ている。他にも「埼玉県住まいづくり協議会」が認証する「防犯の家」という制度もある。これは、同協議会が認定した防犯アドバイザーが、この制度に申請された住宅を厳しく診断し、それをクリアした場合に認証され、その証としてステッカーが交付されるというものだ。この協議会は平成8年に発足した官民の共同体で、過去に社会問題となった“悪徳リフォーム業者”への対策が成功したことで、注目を浴びた。その会員には埼玉県内で地域に密着してシェアを伸ばすポラス中央住宅やアキュラホームなどの住宅メーカーをはじめ、様々な業種の企業が名を連ねており、全国でも稀なケースの団体だ。
防犯対策は年々向上し、その技術もどんどん進化しているが、まずは住まい手の高い意識が求められる。そのためにも、前述のような地域に密着した団体や地方自治体が今以上に住民たちに対してコミュニケーションを取ることが求められるのではないかと考える。(編集担当:加藤隆文)