2014年の航空業界は、LCC(ローコストキャリア)と呼ばれる格安航空会社の利用増加が最大のトピックだった。中でもPeach Aviation(ピーチ・アビエーション ※画像ロゴ)は就航開始から3年目で単年黒字を達成。搭乗率は80%超を堅持し、リピーター率でもトップを走っている。
2014年の航空業界は、LCC(ローコストキャリア)と呼ばれる格安航空会社の利用増加が最大のトピックだったと言えるだろう。国内線を中心に、例えば、成田―那覇間を1万円以下という便や、また移動距離や時期によっては片道1~3千円という、驚くほど低価格の便も多い。その安さが人気の理由だが、一方で、遅延や欠航などの問題から安全性やサービス面を不安視する声も多く聞かれた。
特に人気を集めたのは、ANA(全日本空輸)<9202>系列のPeach Aviation(ピーチ・アビエーション)やバニラ・エア、JAL(日本航空)<9201>系列のジェットスター・ジャパンだ。業界各社の昨年の動向を振り返るとともに、今年度の展望をまとめてみた。
まず、ピンク色の機体と制服が印象的なPeach Aviationからみていこう。12年3月の就航から3年で単年黒字を達成。夏から秋にかけては、パイロット不足による欠航問題などのトラブルもあったが、現在国内LCCにおいては最大手と言える。成功の理由は、他のLCCよりもサービス面の充実を図り差別化を行っている点が大きい。低価格だが、楽しさと快適さを重視したサービスの工夫が実り、搭乗率は80%超を堅持。リピーター率もナンバーワンだ。また、関西空港を拠点にしているため、成田空港を拠点とする他社よりも韓国・台湾・香港など国際線のハブ空港として利用度が高く、その点も強みとなっている。
続いてバニラ・エア。Peach Aviationと同じくANA系列会社だが、こちらの拠点は成田空港だ。7月から成田―奄美大島便を1日1往復就航開始し、夏場は搭乗率90%と好調だったが、秋以降は苦戦している。15年1月と2月に使える成田―奄美大島便1ヶ月乗り放題定期券を販売し、冬場もアピールを行っているが、依然ピーチとの差は大きい。それでも国内二番手をキープし、来年度の業績上昇を見込みたい。
苦戦を強いられているのが、JAL系列会社のジェットスター・ジャパンだ。営業利益は3年連続の赤字、経営の立て直しを迫られている。こうした状況に11月末には、大株主であるJALと豪カンタスグループが最大110億円を追加出資すると発表した。15年2月末からは初の国際線である大阪/関西―香港便も就航開始し、巻き返しを図る。
ピーチ、バニラが好調なのに対しジェットスターが苦戦しているのは、そのまま株主であるANAとJALの立場が以前と逆転し、ANA優位となっていることも影響しているだろう。
そして今年、LCC利用の動きは地方にも広がった。北海道の千歳空港を拠点にしたAIR DOは、ウィンターリゾートに人気を呼んでいる。その他、名古屋小牧・福岡・松本を拠点に置くフジドリームエアラインズ、宮崎空港を拠点に九州・沖縄と成田を結ぶソラシドエアなど、それぞれ地方利用に特化しアピールを行っている。
最後に、今年の展望をみてみよう。60ドル割れをも記録した原油安を受け、15年度は世界の航空業界は過去最高益を記録するとの見通しが強い。燃料支出の大幅減は、コスト削減を第一とするLCCにも追い風だ。また、1ドル120円という円安もあり、海外旅行よりも国内旅行が増えている。そこでさらにLCCの利用が増えるのでは、という期待もある。しかし、LCCは利益を出すには搭乗率平均80%が必要と言われ、課題としては繁忙期と閑散期の旅客数差をいかに埋めるかが重要となっている。今年はそうした課題を踏まえ、国内LCC社ブームの真価が問われる正念場となるのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)