2014年旅行業界を振り返る 円安や消費増税の影響は?

2015年01月07日 12:13

 景気の波の影響を大きく受ける旅行業界。消費増税や大きく進行した円安など目まぐるしく経済環境が変化する中、同業界の現状とこれからの展望を日本旅行業協会の実施した「旅行動向調査」を元に紐解いてみよう。

 2014年の国内旅行は概ね好調な一年となった。旅行動向調査におけるDI指数は1年を通してマイナスに転落する場面は見られず、直近の12月期においても前回見通しを2ポイント上回り+8という結果であった。

 旅行先では東京(+12)が強い他、人気映画ハリーポッターをテーマとした新アトラクションのオープンに沸くUSJのある京阪神(+21)、リゾート地の沖縄、奄美(+5)、九州(+5)が好調だ。また、顧客層別では個人旅行に比べ団体旅行の伸びが大きい。

 一方、国内から海外への旅行については回復の兆しが見えない。これは円安の影響に加え去年はエボラ出血熱の流行、香港での大規模デモ、中東におけるイラク国などのテロ活動の活発化と、旅行マインドを冷やすニュースが世界各地で連日発生したことが要因であると考えられる。同調査における顧客層別の需要見通しについても、1-3月期については季節要因もあり「学生」は上向きとなる見込みだが、その他の「商用・視察」、「ハネムーン」、「ファミリー」、「シニア」、「インセンティブ」、「OL」と全ての層において下落が続く見通しだ。

 逆に海外から日本へ訪れる観光客の数はうなぎ上りだ。日本政府観光局の発表によると14年1月から11月までの訪日外国人数は累計で1,200万人を突破。11月の訪日外客数は116万9千人で前年同月比は+39.1%増となった。また、3月以降は連続して100万人を上回っており、年間でも1,300万人を突破するのはほぼ確実とみられる。

 訪日外国人数増加の背景には円安や10月から開始された消費税免税制度の拡充、様々な訪日を促すプロモーション活動がある。

 市場別に見ても中国、台湾、香港、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、インド、オーストラリア、フランス、ドイツの11ヶ国で既に年間訪日客数の過去最高を上回っており、東アジア、東南アジア、北米、欧州と幅広い地域から日本が注目されていることが伺える。

 旅行業界は裾野の広い分野である。旅行会社だけでなく宿泊施設、航空や鉄道などの交通、レジャー、アミューズメント等々関連する産業は大変多い。これらの持つGDPへのインパクトは合計で約6%にもなり、これは自動車産業をも上回る規模である。

 この旅行業がいかに活気づくかは日本全体の景気の先行きにも当然大きく関わってくる。

 政府や日銀の動向を考慮すれば金融市場において今年は更に円安が進む一年となりそうだ。旅行業各社は国内旅行のレパートリーを増やし、これまでにない斬新な旅行プランの提案に力を入れると考えられる。

 九州で運行されている、豪華鉄道クルーズ「七つ星」の成功にも現れている通り、値段の高いハイクラス志向も今後は徐々に強まってくるだろう。(編集担当:武田薩樹)