2014年は、11月までで累計1200万人の外国人旅行客が日本に訪れた。政府観光局によると、通年の訪日外国人旅行者数は過去最高の1300万人超になる見通しだという。一方で、日本から海外への旅行者は円安の影響などを受け減少傾向。国内での節約型小旅行がトレンドとなった。
昨年、2020年の東京五輪開催も決まり、政府は外国人旅行者増加の政策を進めてきた。14年の旅行業界は、そうした政策を受けての海外からの旅行者増加に沸いた一年だった。一方で、日本から海外への旅行者は、円安の影響や消費税増税による節約志向を受け減少。国内での節約型小旅行がトレンドとなった。
13年に、訪日外国人旅行者数は年間累計1030万人を越え、過去最高となった。今年はそれ以上のペースで伸び続け、すでに11月までで累計1200万人が日本に訪れている。政府観光局によると、通年での訪日外国人旅行者数は1300万人超になる見通しだという。
最大の要因となっているのは、1ドル120円まで下がった円安だ。海外、特にアジアの人々にとって今まで「日本への旅行=高い」というイメージだったのが、大きく変わりつつある。また、昨年からの観光客増加に対応して、地方の観光地や飲食店、お土産物の店舗などでも、英語・韓国語・中国語などを中心に外国語での接客対応や表記を増やしている。そうした取組みに積極的な観光地や店舗には、外国人リピーターが付くのも早い。また、10月からは外国人旅行者の消費税免税も拡大され、食料品・飲料品・化粧品などの消費税免税が行われている。金額や梱包などに条件はあるものの、この免税により、地域特産の食品やお菓子、日本酒などをお土産にする外国人旅行者も増加しているようだ。
続いて日本人旅行者だが、こちらは円安の影響を逆に受け、海外旅行は減少傾向にある。日本から海外への旅行者数は3年振りに年間1700万人を下回る見通しだ。行先も近場で比較的安価な東南アジアが人気となっている。
4月の消費税増税以来、消費者が節約志向になっていることもあり、贅沢な海外旅行よりも、国内の安価で日数も短い旅行が求められているようだ。楽天トラベル(楽天〈4755〉)調べのデータによると、年間を通し国内の旅行先で昨年に比べ予約数が最も伸びた都道府県は佐賀県(22.5%増)となっている。その内20%が福岡県からの旅行者で、これを見ても「お金をかけて遠くへ行く」よりも、「節約しつつ近場の名所を楽しむ」といった形の旅行スタイルが流行していることをうかがわせる。
また、日本人・外国人に関わらず、旅行スタイルだけでなく情報の広がり方も以前とは変わってきた。旅行会社のプランやガイドブックなどで決められた旅よりも、インターネット上の口コミを利用して、気になるスポットやお店を自由に訪れる人が多いようだ。そこで丁寧な接客サービスを受けた旅行客は、その感動をTwitterやfacebookなどを通して拡散する。それが新しい口コミとなり、さらなる観光客やリピーターを呼び込むことが多いという。そのため少々マニアックな観光地であっても、サービスが充実していれば、以前よりもしっかり国内外問わず旅行者を掴むことができているようだ。
15年の見通しだが、訪日外国人旅行者数は依然好調な増加が見込まれており、来年度には年間1500万人が予想されている。一方、日本からの海外旅行や国内旅行だが、まだしばらくは節約志向が続くことからも大きなトレンドの変化はないと思われる。ただし、大企業を中心に好景気を実感する人が増えてきていることや、原油安の影響でガソリン代などが低下していることから、14年末を底として、緩やかに回復していくとの見方が強くなっている。(編集担当:久保田雄城)