10月8日、財務省は国の財政を議論する審議会(財政制度等審議会)で、介護保険で介護サービスを提供する事業者が受け取る料金である介護報酬を来年度から大幅に引き下げることを提案した。 財務省は、10月3日に公表された介護事業者の「経営実態調査」の結果によれば、介護事業者の収支差益が8%にのぼると指摘した。
その上で、財務省は、介護事業者の収支差益を中小企業の収支差益である2.2%に合わせるよう、介護報酬を引き下げるべきであることを指摘した。さらに、「高齢化によって市場の拡大が進んでいくなかで、規模の経済によるコスト低減が見込まれることも踏まえれば、介護事業者の収支差益を中小企業より低くすることも検討すべき」であると付言した。
介護事業者が受け取る料金である介護報酬は3年ごとに事業者の経営状態や物価動向などを勘案して見直すこととなっている。財務省は上記のとおり、特別養護老人ホームなどの介護事業者が中小企業等に比べ著しく高い利益を上げていることを指摘し、介護報酬の6%引き下げを求める方針だ。もっとも、介護現場では人手不足が深刻となっているため、介護従事者の処遇を改善する策は別途検討するという。
介護従事者のうち介護職員の2013年度平均月給は常勤で約28万円、非常勤で約16万円である。看護職員の13年度平均月給は常勤で約37万円、非常勤で約21万円である。これらの月給は著しく低いとはいえない。しかし、介護職員や看護職員が行う仕事が重労働であることを考えれば、13年度の介護職員(常勤労働者)の離職率が16.8%と比較的高めであることもうなずける。今後、介護報酬の引き下げに伴い、介護従事者の不当な給与の引き下げが横行すれば、介護従業者の離職率が上がり、介護事業のサービスの全体的な低下につながる。高齢者の増加が著しく、介護事業の需要が高まっている今、介護事業のサービスの低下は避けなければならない。
介護報酬の引き下げが介護従事者の離職につながらないために、介護事業者の裁量に関係なく、相当の利益が介護従事者に渡るシステムを、介護報酬の引き下げと同時に確保する必要性が高い。(編集担当:久保田雄城)