社会保障給付費過去最大 衆議院解散で改革未消化

2014年11月22日 17:33

 2012年度の年金や医療、介護などに使われた社会保障給付費が過去最高を更新したことが11月11日に分かった。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の発表によると、前年度比1.0%増の108兆5,568億円となった。国民1人あたりでみた場合は前年度比1.2%増の85万1,300円となる。

 部門別でみると、「年金」が53 兆9,861億円で全体の49.7%を占め、「医療」は34兆6,230億円で31.9%、「福祉その他」が19兆9,476億円で18.4%となる。前年度比の増加率は年金が1.7%増、医療が1.6%増。一方、福祉その他は2.1%減となっているが、このうち「介護対策」だけ分けてみてみると6.4%増と大幅な伸びとなっている。福祉その他が減っている理由としては、民主党政権時代に実施された子ども手当の影響と、東日本大震災への支援に支出が回ったことが挙げられる。また介護が著しく伸びたのは、高齢化が進み介護が必要な高齢者の数が全体的に増加したことと、介護従事者の労働環境改善を目的とした賃上げのために介護報酬が1.2%増額されたことが背景にある。

 高齢者が増加し、少子化が進む一方では社会保障の負担増が拡大し、財政圧迫が避けられない。政府は骨太方針で50年後に人口1億人を目指すために、20年を目途に人口減少の流れを食い止めるとしていた。結婚や出産、子育て環境の整備、地域活性化対策、経済成長対策に乗り出していたが、未だ成果は見えず、そのどれもが中途半端なままだ。

 政府は衆議院を解散し、総選挙によって国民の信を問うとしているが、政策の投げ出しとの批判は避けられないだろう。さらに票の多くを握る高齢有権者層の取り込みを意図してか、厚生労働省が作成した医療保険制度改革試案の公表が直前で見送られ、修正が加えられる予定であったことが分かった。医療保険制度改革試案は75歳以上の後期高齢者医療制度の内容に触れており、低所得者を対象とする特例措置を段階的に廃止していく改革案が組まれていた。政策よりも選挙、と保身に走っていては、改革は成し遂げられないだろう。(編集担当:久保田雄城)