ハイブリッドで出遅れた日産、新型HVと新型電気自動車を来年発表か

2015年01月10日 14:48

Note-JPN-Premiere

アクアやフィットに対抗する目的で日産がノートにハイブリッド車を追加する。ただし、2016年の話だ。 写真は現行日産ノートの発表会のショット

 日産自動車が、電気自動車(EV)とハイブリッド車(HV)のラインアップ拡充に乗り出す。2016年度にはEVを2車種発売するという報道が過日された。

 しかし、新型EVの投入が年内ではなく、来年というのは、やや遅すぎるきらいがある。日産は2010年に量産型EV「リーフ」をグローバルで発売した。これまでに、世界における累計販売台数は15万台を超え、独フォルクスワーゲン(VW)や米テスラ・モーターズを抑えて最も多くのEVを販売している。

 また、同社主力の小型車「ノート」にHVモデルを加える。世界で最も多くのEVを販売する日産としての実績を活かしてコストや性能を改善し、エコカー競争で優位に立つというのが日産の描くシナリオだ。2014年12月にはトヨタ自動車が燃料電池車(FCV)「MIRAI」を発売しており、これに対抗する目的もあるようだ。

 が、しかしだ。日産が現在販売する乗用車EVはリーフだけ。そろそろ古さを感じさせるモデルであることは確かだ。今年あたりにモデルチェンジが必要なのは普通のクルマとして当然だ。しかも、この10年以上の間、エコカーの主軸にハイブリッド車を据えたトヨタは、20車種にのぼるHVモデルを国内外で供給している。ホンダだって片手の指では足りない9車種だ。

 2010年に日産がEV「リーフ」を発売した際には、「以後、EVのデビュー・ラッシュが続く」ものと思わせた。が、コンパクトなハッチバック車のリーフに次いだのは、商用車のNV200だけ。スカイラインのスポーツEVクーペGTも高級セダン・フーガEVも無かった。もちろん、コンパクトなマーチやノートにも。

 その日産は2016年度後半──ずいぶん先の話である──にリーフの後継モデルと軽自動車をベースに三菱自動車と共同開発するiMiEVの後継車種、新型EVを発売するという。NMKV(日産・三菱・軽自動車企画会社)さえ存続が危ういと昨年報道されたなかで、両社協力関係が維持できるのだろうか?

 リーフの後継車である新型は、1回の充電で走れる距離を現行の228km以上に延ばすとともに、車両価格を現状の287万円よりリーズナブルな価格設定とする。三菱自と開発する軽自動車クラスの新型車は1回の充電での走行距離は現行のリーフに比べて短いものの、価格は100万円台半ばに設定する。軽自動車ユーザーに向けて選択肢を増やすということらしい。

 現在の試算では、EVが200kmを走るのに必要とされる充電のための電気料金は300円程度だという。ほぼ、ガソリン車が同じ距離を走るのに必要なガソリン代の25%で済む。が、HVが満タンで700km程度の航続距離があるのに対して、日産製EVはフル充電でも200km超しか走れず、車両価格も高い。

 さらに、日産は国内販売13万台超を販売している、同社で最も売れている車種ノートにHV追加して発売する。これまで「フーガ」や「スカイライン」などの高級車を中心にHVを4車種そろえている。が、普及価格帯の車種がなく、「プリウス」や「アクア」、「カローラ」などでハイブリッド車を展開するトヨタに大きく遅れを取っていた。

 米カリフォルニア州などが、自動車メーカーの販売台数の一定割合をCO2が一切出ない、先鋭的な「ZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)規制」を導入する。ニューヨーク州なども同様の規制を取り入れる予定で世界的に排ガス規制が強化される見通し。世界の自動車大手はエコカーの品ぞろえ拡大を迫られている。

 規制強化に備えて、トヨタやホンダは水しか排出しないFCVを次世代のエコカーの主力に据える見込み。日産や独VWはEVに力を入れる方針で、自動車大手で戦略に違いがある。また、リフォルニア州が設定する「ZEV規制」から、ハイブリッド車は除外されるらしいことも伝わっている。

 燃料電池車に関する一切の特許権を無償で世界に提供するとした「驚くべきトヨタの決断」発表の前に“霞んでしまう”と思うのは筆者だけだろうか?(編集担当:吉田恒)