国土交通省鉄道局は1月27日、JR九州を民営化する方針を明らかにした。昨年10月より「JR九州完全民営化プロジェクトチーム」が発足し、民営化に向けた課題を検証していた。JR九州は国から経営安定基金3,877億円を受けているが、この取扱いについて同チームは資産として振替え、自主運営を後押しする考えを提言した。
その内容としては、九州新幹線貸付料として2,205億円を一括前払いし、さらに鉄道資産の取得分として無利子借入金の償還財源に800億円を振替える。そして鉄道路線の維持と向上に必要な鉄道資産として872億円を振替えるとした。債務負担を軽くすることで、収益を守り、経営の安定化を図るのが目的だ。政府は2016年度の上場を目指し、今年2月にJR会社法改正案を閣議決定後、通常国会に同改正案を提出する方針。
株式上場に際して、現在、全株式を持つ独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、保有する株のすべてを一括売却する。財務省は民営化の際には基金を国へ戻すよう求めていたが、基金を資産として計上することで企業価値が高まり、売却予定の株式が高値で売れるということから、国土交通省の考えを受け入れたようだ。
民営化にあたり、今後は国が定めるJR会社法の適用から外れる予定だが、適正な事業運営のために、ある程度の事項を国土交通大臣が「指針」として提示する。指針の内容は、各JR会社同士で連携と協力を図りながら、鉄道路線の保安と安全と適切な維持を守り、中小企業者へ配慮を怠らないことなどが含められる。利益重視に走り利用者の不利益を招くことがないよう、不採算路線であるローカル線などの維持も求める内容となっている。
国鉄の分割でJR九州が発足したのは1987年。当初は全体の営業損益が288億円の赤字だったが、2001年には90億円の黒字に転換。駅ビルやマンション、ホテル、外食事業など鉄道以外の事業で経営改善を図ってきた。しかし、肝心の鉄道事業は赤字から脱することができていない。人口減を迎えるこれから、鉄道事業はさらに難しくなりそうだが、同社はコスト削減を徹底して対応していくとした。(編集担当:久保田雄城)