モーダルシフト(Modal Shift)という言葉、ご存じですか? 健全な企業経営のひとつの手段です

2014年11月08日 17:36

Modal Shift

JR貨物の報告では、今年に入ってコンテナ貨物の取扱量は、消費増税後の消費低迷にもかかわらず、この9月まで13カ月連続で前年実績を上回る。物流システムがシフトしている

 モーダルシフト(Modal Shift)、簡単にいうと「人や荷物の輸送手段の転換を図ること」となる。しかし現実的には、“単純な転換”ではなく省エネルギーや交通渋滞の緩和、環境破壊の阻止や地球温暖化防止に向けた企業や行政による積極的かつ包括的な施策のひとつだ。

 内閣府によれば、1991年から運輸省(現・国土交通省)が推進するモーダルシフトとは、トラックによる幹線貨物輸送を「地球に優しく大量輸送が可能な海運または鉄道に転換」することをいう。とくに長距離輸送については、海運・鉄道の比率を向上させることを目標とする。

 このモーダルシフトが“じわり”日本企業で進行・加速しているようなのだ。商品や原材料の輸送に鉄道を活用する企業が増えている。キヤノンとダイキン工業が連携する共同輸送の例で説明する。

 キヤノンとダイキン工業は東京・大阪間の鉄道輸送で提携し、31フィート(10.69m)型の大型コンテナでキヤノン製の複写機やプリンターを東京から大阪に運ぶ。引き返す逆のルートでダイキン製のエアコンを運搬する。今年2月から1週間5回でスタート、この10月からは10回に倍増させた。キヤノンは従来だと60%程度だった「東京・大阪」の鉄道輸送を、このダイキンとの連携で80%までにする予定だ。ダイキンも同じ経路で40%だった鉄道利用を45%にするという。この幹線輸送のモーダルシフトによって物流コストを10%削減。同時にCO2排出量も10%程度少なくなる。

 キヤノンは、2002年から物流にともなうCO2排出量の削減に向けたモーダルシフトや積載効率の向上、輸送距離の短縮などに継続的に取り組んでいる。近年は、物流センターの集約や海上コンテナの往復利用など、新たな削減施策を実施。2013年には運送会社と提携して、ディーゼル車に比べてCO2排出を約2割削減できる大型天然ガス車を導入している。また、地方の港湾を活用することで、国内各地の生産拠点から京浜港への長距離トラック輸送を減らしている。また、海外生産拠点からコンテナを直送する国内物流センターを増やすことで、国内拠点間のトラック輸送を削減した。また、海外を含めたグループ全体で削減に努め、2013年国際輸送において航空輸送から船舶輸送へのモーダルシフトをさらに推進してきた実績がある。2005年には、国土交通省が推奨する「エコレールマーク」制度の企業認定をいち早く取得。鉄道輸送を活用して地球環境問題に積極的に取り組む企業としての認定要件を満たし、以降、認定を継続している。

 こうした動きは大型トラックの運転手不足に備える意味もあり、キヤノン・ダイキンだけでなく、業種を超えて広がりを見せる。ネスレ日本では鉄道輸送を2016年までに2013年比で倍にする計画だ。YKKAPは、広島から首都圏に輸送するウィンドウサッシのように、輸送距離で500kmを超える商品輸送を鉄道・船舶に切り替える。味の素でも500km超の製品輸送を2016年までに鉄道輸送に換えるという。リテイラーとメーカーの協働もある。大型スーパーのイオンと花王は、大型コンテナを活用し「東京・福岡」間で日用品や飲料を鉄道輸送する。

 JR貨物(日本貨物鉄道)の統計によると、今年に入ってコンテナ貨物の取扱量は、消費増税後の消費低迷にもかかわらず、この9月まで13カ月連続で前年実績を上回っている。モーダルシフトへの流れを受けてJR貨物は、新規顧客開拓に向けて営業社員の増強を図るという。(編集担当:吉田恒)