電子部品「京都4社」は「スマホと自動車」好調で通期見通し上方修正ラッシュ

2015年02月07日 20:26

RIST

好調な市場背景を受け、車載用や産業用途の電子部品需要が拡大する中、ロームはタイ工場に新棟を建設しLSI後工程の生産能力強化に乗り出した

 ■増産と円安による為替差益で増収増益が並ぶ

 京セラ<6971>、日本電産<6594>、村田製作所<6981>、ローム<6963>の電子部品メーカー「京都4社」の4~12月期(第3四半期)決算は、京セラ以外は前年同期比大幅プラスで、日本電産と村田製作所の通期見通しは上方修正のラッシュになった。

 京セラは売上高が2.8%増の1兆1016億円、営業利益は0.6%増の902億円、最終利益は6.6%増の739億円の増収増益。通期業績見通しは売上高を1兆5800億円から1兆5300億円に下方修正したが、それでも前期比では5.7%増。営業利益12.0%増の1350億円、最終利益9.3%増の970億円の利益見通しは据え置いている。80億円の年間配当見通しも据え置きだった。売上高下方修正の要因は前年同期にあったメガソーラー向け機器の売り上げが消えたためで、スマホ用電子部品の販売は絶好調と言っていい。

 日本電産は売上高が16.6%増の7537億円、営業利益が30.5%増の807億円、最終利益が34.8%増の580億円という2ケタ増収増益。通期業績見通しは、売上高を9600億円から1兆円(前年同期比14.3%増)に、営業利益を1050億円から1100億円(29.6%増)に、最終利益を690億円から750億円(33.3%増)にぞれぞれ上方修正。年間配当も60円から70円に増額修正した。昨年4月に実施した1株を2株にする株式分割を考慮すると140円で、前期の100円を4割上回る。ドル円の想定為替レートは110円で、通期ベースでは1円の円安で売上高は66.8億円、営業利益は8.4億円押し上げられるという。

 村田製作所は売上高が19.8%増の7777億円、営業利益が53.5%増の1611億円、最終利益が75.8%増の1312億円の2ケタ増収増益。通期業績見通しは売上高を9650億円から1兆100億円(前年同期比19.3%増)に、営業利益を1700億円から1950億円(54.9%増)に、最終利益を1240億円から1500億円(61.0%増)にぞれぞれ上方修正。年間配当も160円から180円に増額修正した。増産で通期の設備投資額を800億円から900億円に上方修正しているのが目立つ。

 ロームは売上高が9.1%増の2752億円、営業利益が72.6%増の320億円、最終利益が72.3%増の382億円で。通期業績見通しは売上高3570億円(前年同期比7.8%増)、営業利益340億円(43.8%増)、最終利益300億円(6.5%減)で据え置いた。もっとも、昨年11月6日に売上高は130億円、営業利益は85億円、最終利益は90億円上方修正している。その際の60円から90円に増額修正した年間配当も据え置き。想定よりも円安になり、第3四半期で170億円の為替差益を営業外収益に計上し、最終利益が伸びた。

 ■高付加価値のまま逃げ切れる日本製電子部品

 昨年は9月にアップルの「iPhone6」が発売され、一方で「小米(シャオミ)」など中国メーカーのスマホも大きく伸びて不振の韓国サムスンの落ち込みを完全に補った。自動車も「IoT(インターネット化)」の進行で電子部品への特需が生まれている。「スマホと自動車」の需要拡大で国内の電子部品メーカーの工場の多くは増産に次ぐ増産で、3月期の通期業績見通しは村田製作所、日本電産が売上高でが過去最高を更新して初めて1兆円を超える見通し。円安効果で利益も伸びている。昨年10~12月の大手6社の受注総額も前年同期比19%増の1兆3600億円で、3四半期連続で過去最高を更新し(日本経済新聞社調べ)、天気にたとえれば快晴だ。

 京セラはスマホ向けコンデンサーが好調で水晶関連の部品も伸び、太陽電池、通信機器の低迷を補った。電子デバイス関連事業だけ取り出せば前年同期比33.1%の大幅増益になる。日本電産はエアコンなど家電向けモーター、ハードディスク装置(HDD)向け精密小型モーターとともに三本柱を確立した自動車向けモーターの成長が著しい。HDD向けも10~12月で底を打ったという。村田製作所は周波数を制御する「表面波フィルター」という世界シェアの約55%を握る製品を持っており、通信モジュール、超小型積層セラミックコンデンサーともども世界的なスマホ・タブレット生産の伸びの恩恵を受けている。ロームはスマホへの依存度が低く自動車、産業機器向けが成長の柱で、2018年3月期までに売上高比率を自動車関連は26%から30%に、産業機器関連は8%から10%に伸ばす計画。センサーは2017年3月期までに売上高比率を5%弱から10%に大きく伸ばす計画で、次の成長商品として強化する。

 日本の電子部品メーカーの強みは何と言っても「技術力」。特に世代交代が激しく最新のスペックがすぐ陳腐化してしまうスマホでは、高速通信や高画質化など最新の技術革新に直ちに対応し、部品を安定的に供給できるのは日本メーカーだけと言っても過言ではない。ライバルの韓国メーカーなどはどうしても一歩遅れ、完成品の低価格化の影響を受けてしまうが、先進技術を盛り込んだハイエンド機種に使われる日本製は高付加価値のまま逃げ切れるので「利益なき繁忙」に陥りにくい。中でも「京都4社」は技術志向が強く、その世界シェアをひろげている。

 今後、大きな期待が集まるのは「IoT」が自動車から他の分野にも拡大していくこと。たとえば生産設備、ロボット、医療機器、家電、社会インフラなどさまざまな分野に通信モジュールやセンサーの需要がひろがると、電子部品のマーケットは急速に拡大していく。2013年にホンダエレシスを買収して自動車電子制御ユニット(ECU)の技術を取り込んだ日本電産に代表されるように、技術開発や販路拡大のために必要であれば積極的なM&Aに踏み切る経営姿勢を持つ「京都4社」は、最新の技術に即応しなら優位を保ち、その中心的な役割を果たしていくだろう。(編集担当:寺尾淳)