財務省は12月17日、11月の貿易統計を発表。29か月連続の貿易赤字となることが分かった。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は8,919億円の赤字で、前年同月の1兆3,011億円の赤字よりも31.5%減となった。
財務省は12月17日、11月の貿易統計を発表。29か月連続の貿易赤字となることが分かった。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は8,919億円の赤字で、前年同月の1兆3,011億円の赤字よりも31.5%減となった。
輸出額は前年同月比4.9%増の6兆1,889億円。米国やEUへの自動車輸出は減少となったが、スマートフォンなどに使用されている半導体電子部品や液晶などの科学光学機器、金属加工機械などが輸出増となり、貢献した。しかし、貿易収支にもっとも強く影響を与えたのは、原油価格の急落だろう。
原油価格は近年1バレルあたり100ドル前後で推移していたが、今年7月には100ドルを割り、10月には90ドル、11月には80ドル、12月に入ってからは一時60ドルを割り込むなど急落している。これまで原油価格が高騰していた背景には、中国などの新興国の経済発展による需要増加があったが、中国経済も最近は鈍化傾向に変わってきている。
また、技術開発により、米国の安価なシェールガスが登場したことも関係している。新たな資源となるシェールガスが普及すれば原油は供給過剰となり、価格下落は免れない。これを受けて石油輸出機構(OPEC)は原油の減産を計画したが、サウジアラビアが拒否するなど意見が割れ、結局原油の供給量は抑えられなかった。
こうした理由によって引き起こされた原油価格の下落により、11月の日本の輸入額は3ヶ月ぶりに減少。前年同月比1.7%減の7兆807億円となった。特に原粗油や重油、石炭などの石油資源の輸入額が与えた影響は大きなもので、中東からの原油は実に21.6%減となった。
原油価格の下落は日本にとって追い風となりそうだが、ロシアではルーブルの暴落にも繋がっており、世界経済の混乱も懸念されるところだ。また国内では円安による影響で中小企業が苦戦を強いられており、この原油安を素早く転嫁して国内の景気対策を整えていくことが急務の課題となりそうだ。(編集担当:久保田雄城)