米Appleは9月に発売したiPhone 6およびiPhone 6 Plusモデルの販売台数は、発売から3日で世界販売1000万台を超え、新記録を樹立したと発表した。iPhone6/6Plusは、日本、米国、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、香港、プエルトリコ、シンガポール、英国で先行発売中だった。
同様に日本国内販売においても、昨年発売の従来機「5s/5c」の販売台数と比べ1.5倍と過去最高に達していることがわかった。市場調査会社のBCN(東京・千代田区)が主要家電量販店における販売実績をまとめたもので、2008年のiPhone国内発売以来、最多の水準で推移しているという。
通信会社別ではソフトバンクモバイルがわずかにシェアを落としながら引き続き首位。2008年からiPhoneを取り扱ってきた同社は既存利用者の流出が懸念されていた。が、下取りキャンペーンなど既存顧客の囲い込み策が奏功し発売6日目までの販売台数シェアで従来モデルの5s/5cのシェア44%から2ポイントの減少にとどめ、シェアトップを死守している。
なお、4.7型液晶を備えたiPhone6が82%と多数派で、5.5型液晶のiPhone6 Plusは18%にとどまる。内蔵ストレージの容量では両モデルともに64ギガバイトが最多となった。
BCNのアナリストよれば「従来機種で小さな画面に満足していなかった人が買い替えに動き、NTTドコモの購入者が増えたことが背景にある。Appleも日本の初期出荷数も多めに確保したとみられ、それもプラスに働いた」と分析している。
iPhone 6とiPhone 6 Plusのふたつのモデルは、4.7インチと5.5インチのRetina HDディスプレイを搭載。新しく薄い継ぎ目のないデザインに革新的なテクノロジーを搭載している。あらゆる面でさらに進化した両モデルは、Appleが設計したA8チップを搭載して超高速パフォーマンスと電力効率を達成した。
新しいiPhoneは、App Storeの登場以来3度目のメジャーアップデートとなるiOS8を搭載し、直感的な操作感、予測タイピング機能を持ったApple Quick Typeキーボードなどを備えている。iOS8はユーザーが所有するMacと簡単にデータを同期し、どこからでもファイルの保管とアクセスを実現するiCloud Driveを標準で装備する。
ところで、これまでApple iPhoneの基礎を支えてきたのは日本の部品産業技術だとされてきた。確かに先代モデル5s/5cまでのパーツは、日本製が多数使われていた。しかし、以前からApple製iPhoneの組み立てを担ってきたのは台湾の大手電機メーカーである鴻海(ホンハイ)だった。が、ここにきて内部部品でも台湾メーカーが台頭してきたようだ。
まず、新型iPhoneのボディである金属筐体を生産するのは可成科技(キャッチャー・テクノロジー)だ。可成はパソコンなどの金属筐体製造の専門メーカーで世界最大手とされ、世界シェア30%といわれる。アルミニウムやマグネシウム合金を微細に削り出す高い技術を持ち、外観を整える丁寧な仕上げに定評がある。iPhone 6で高級感を追求したいAppleの意向に合致したというわけだ。
また、内蔵カメラの光学レンズも台湾メーカー製だ。400超の自社特許を持つ大立光電(ラーガン・プレシジョン)は、0.1mmの極薄レンズを生産・納品する。この分野で世界シェア30%超を握っているといわれる企業だ。
このほか、極薄ガラス基板にセンサーを形成し、軽く触れるだけで反応するiPhoneの操作性を実現するタッチパネルは、宸鴻科技(TPK)。その液晶駆動用ドライバーICは、聯詠科技(ノヴァテック)が生産する。また、日本が得意とされてきたリチウムイオン電池でも新普科技(シンプロ)が供給している。
加えて、iPhoneの心臓部ともいえるプロセッサは、これまで韓国サムスンが製造してきたとされているが、新型iPhone6/6Plusに採用されたA8チップは台湾の大手・台湾積体電路(TAMC)製だと分かっている。
このようにApple iPhone6/6Plusの登場と好調だとされる販売で分かることは、世界のスマートフォン産業で台湾の部品メーカーが世界標準を握りつつあるということ。Appleの厳しい要求に応えて、技術力を磨いてきた結果といえそうだ。日本のお家芸といわれた精密部品産業で台湾企業が実権を握り始めたわけだ。ちなみに、この7月に電子部品製造が好調で、台湾の鉱工業生産は過去最高を記録した。(編集担当:吉田恒)