スマートフォンやタブレットの普及、さらにはウェアラブル機器の登場も相まって、2012年度以降、センサ市場が急成長している。とくに民生用加速度センサやジャイロセンサ(角速度センサ)の世界市場は今後も高い成長が見込まれており、電子部品メーカーでは激しい開発競争が繰り広げられている。
ローム<6963>や村田製作所<6981>、アルプス電気<6770>などの電子部品メーカーがセンサ事業の取り組みを強化しており、これらの企業は情報を検知するセンサエレメント、演算回路となるASICにソフトウェアの開発に加えて、センサネットワークの構築に向けた無線モジュールの提案も行っている。中でもロームはセンサ事業を強化する新組織を立ち上げ、新しいセンサを次々開発するなど積極的な動きが目立っている。
また、これからのセンサ技術を語る上で外せないのがMEMS(メムス・Micro Electro Mechanical Systems)だ。MEMSとは、機械要素部品やセンサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基板上に集積したもので、加速度などの動きを検知するためのセンサやインクジェットプリントのプリントヘッドなど幅広い分野の製品に組み込まれ、劇的な小型化・低コスト化・省電力化を実現したり、最終製品の高付加価値化に貢献するキーテクノロジーだ。
一般財団法人マイクロマシンセンターが発表した「平成23年度MEMS関連デバイス国内市場予測」によると、2010年のMEMSの市場規模はMEMS全体で7227億円、MEMSセンサで3680億円だったが、15年には全体で1兆5502億円、センサで8434億円、さらに20年には全体で3兆1263億円、センサで1兆5606億円と爆発的な成長が見込まれている。日本の電子部品メーカーによるセンサの生産・販売金額は世界シェアの約4割を占めるといわれているだけに、この分野の成長は業界だけに留まらず、日本経済にも大きな恩恵をもたらすことが期待できそうだ。
スマホ一つをとっても、その中身はセンサの塊みたいなものだ。加速度やジャイロをはじめ、近接、地磁気、照度、圧力、気圧、温度、湿度、カラーなど、機種によって異なるものの、大体10種類以上の異なるセンサが内蔵されている。我々がフリック一つで様々な機能やアプリをストレスなく利用できるのは、これらのセンサが絶妙に働いてくれているからだ。iPhoneにしてもAndroidにしても、センサ抜きでは機能の半分も発揮できない。この先も、高機能化、省電力化が進むとすれば、高性能、省電力のセンサの果たす役割は益々大きくなるだろう。さらには、車載部品や家電などにもセンサの需要は伸びている。約4割の日本企業のシェアが今後、どれだけ伸びるか楽しみだ。(編集担当:藤原伊織)