それよりも気になるのが、総選挙で政権が交代したばかりのギリシャの債務問題だ。6日にはS&Pが、すでに投機的水準のギリシャ国債の格付けを1段階引き下げ「シングルBマイナス」とした。それが雇用統計による上昇分を全て食い尽くして6日のNYダウ終値は60ドル安になった。今週は9日にイスタンブールでG20財務相・中央銀行総裁会議があり、12日にブリュッセルでEU首脳会議がある。そこで債務問題に何らかの決着がつくとしても、中身が部分的なデフォルトなどショックを伴うものかもしれず、決して楽観視はできない。ギリシャのGDPは2417億ドルで日本の約20分の1(2013年)だが、「あんな小国に振り回されるな」と影響を過小評価していると痛い目にあいかねない。これが今週最大のリスクだろう。
そして日経平均のテクニカルポジションも、前週の週間騰落がマイナスでも25円安にとどまったことで、6日終値時点では意外にも1月30日時点と比べてボリンジャーバンドや25日移動平均乖離率やRSIは、わずかだが「買われすぎ」の方向に振れている。
移動平均線は、5日線(17545円)も25日線(17335円)も75日線(17022円)も200日線(15874円)も、全て下にある。日足一目均衡表の「雲」も下にあり、6日は16279~17322円に位置し、今週の下限は16316~16516円、上限は17356~17375円とやや上に動く。6日終値から300円下落すれば雲の中に入る。ボリンジャーバンドは「ニュートラル・ゾーン」から上にずれて25日線+1σ(17627円)と25日線+2σ(17920円)の間にあり、上値を追いにくいポジション。
25日移動平均線乖離率は+1.80%で、買われすぎではないが1月30日の+1.69%よりも若干増えている。25日騰落レシオは107.22から96.53に下がったが、RSI(相対力指数)は60%から64%に増加した。これは70%以上が買われすぎの目安になる。前週の週間騰落が小幅下落してもテクニカル指標の一部がそうなったということは前週より上昇への期待は持てない週と言え、せいぜい前週のザラ場最高値17743円あたりで止まるとみる。6日のCME先物清算値17810円は高すぎる。
一方、下落への懸念は前週よりも大きい。前週は25日移動平均線を割り込んだ日が日中値幅382円の3日だけだったが、今週はただでさえ不安定なSQ週に加え、ギリシャがらみなど何かバッドニュースでも入れば急落して25日線も、1月のSQ値17341円も、「雲」の上限もあっさり割り込む局面があるとみる。では、どこで止まるか。75日移動平均線が17022円、ボリンジャーバンドの「ニュートラル・ゾーン」の下端の25日線-1σが17043円にあり、サポートラインはこのあたりを想定しておいたほうがいいだろう。
為替のドル円のテクニカルポジションも確認しておくと、年明けからローソク足が日足一目均衡表の「雲」の中に入っており、118円台の雲の上限がレンジタンスラインと化して、それにはね返され続けている。6日の119円台も長続きしなかった。雲は2月末にねじれるが、それまでは為替レートが株価の味方になると期待しないほうがいいようだ。
このように今週は下落しやすいデータがあるSQ週で、外部要因ではギリシャが怖く、テクニカル的には前週よりも下に振れやすくなっており、為替レートも円安方向に振れることをあまり期待できそうにない。国内企業の決算は悪くなく、下落したらGPIFや日銀砲や個人の押し目買いに助けられるとしても、「2週連続の下落週」になると覚悟しておいたほうがいいだろう。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは17000~17750円とみる。我慢の週になり、「18000円チャレンジ」はデータが良いSQ後週の来週に持ち越されそうだ。
暦の上では春だがマーケットには寒風が吹き、「或る荒れはてた季節」へと逆戻りしそうな週。それでも覚悟があればあわてず騒がず対処できるはず。10万ボルトのジルベール・ベコーも哀しいバラードを聴かせた時はある。「夏の終りに薔薇の歌を歌つた/男が心の破滅を歎いている/実をとるひよどりは語らない」(西脇順三郎「冬の日」)。(編集担当:寺尾淳)