【今週の展望】日経平均は一目均衡表の「雲」に乗り上昇か

2015年01月12日 20:16

 今週、1月第3週(13~16日)は12日が「成人の日」の祝日休場で4日間の取引。世界の主要株式市場は12~16日の間に休場はないが、アメリカは19日がキング牧師の誕生日(振替)で休場なので17~19日は3連休になる。

 国内の経済指標は、13日の景気ウォッチャー調査にまず注目。13日は11月の国際収支、12月の景気ウォッチャー調査、12月および2014年通年の倒産件数、14日は12月のマネーストック、12月の産業機械受注額、15日は12月の国内企業物価指数、11月の機械受注統計、16日は11月の第三次産業活動指数、12月の投資信託概況が、それぞれ発表される。

 13日はマイクロソフト「Windows7」のメインストリームサポートが終了する日。東京ディズニーランドで映画「アナと雪の女王」をテーマにしたスペシャルイベントが始まる。3月20日まで。14日には平成27年度(2015年度)当初予算案が閣議決定される予定。14~16日に東京ビッグサイトで「ウェアラブルEXPO」が開催される。15日に日本とオーストラリアの間のEPA(経済連携協定)が発効する。黒田日銀総裁が日銀の支店長会議で挨拶し、日銀から1月の「地域経済報告(さくらレポート)」が発表される。芥川賞・直木賞の選考会が開かれる。16~21日に安倍首相が中東諸国を歴訪する。17日は阪神・淡路大震災から20周年。18日には民主党の代表選挙が行われる。

 主要企業の決算発表は2月期決算企業の3~11月期決算が大詰めで、14日でほぼ終了する。13日はヤマダ・エスバイエルホーム<1919>、パソナG<2168>、ビックカメラ<3048>、コスモス薬品<3349>、住江織物<3501>、東宝<9602>、SFOODS<2292>、いちごHD<2337>、キャンドゥ<2698>、クリエイトSDH<3148>、市進HD<4645>、リソー教育<4714>、コーナン商事<7516>、サイゼリヤ<7581>、ガリバー<7599>、リンガーハット<8200>、歌舞伎座<9661>、文教堂GHD<9978>、14日はウエルシアHD<3141>、松竹<9601>、サカタのタネ<1377>、ウエストHD<1407>、鉄人化計画<2404>、北の達人<2930>、JIN<3046>、ドトール日レスHD<3087>、白鳩<3192>、日本毛織<3201>、レナウン<3606>、モバイルクリエイト<3669>、明光ネットワークジャパン<4668>、北興化学工業<4992>、ユニオンツール<6278>、東洋電機製造<6505>、古野電気<6814>、佐鳥電機<7420>、アデランス<8170>、大庄<9979>、15日はブロンコビリー<3091>、不二越<6474>、16日はティムコ<7501>、くろがね工作所<7997>、リーバイストラウス<9836>が発表する。

 今週は新規IPOはない。1月27日のシンプレックス・ファイナンシャルHD<7176>はTOKYO PRO上場で一般の投資家は売買に参加できず、2月2日のジャスダックのアイ・アールジャパンHD<6035>はジャスダック上場のアイ・アール・ジャパン<6051>の持株会社化に伴う上場で公募、売出しはない。2015年の新規IPOは事実上2月12日のKeePer技研<6036>が最初で、まだ約1ヵ月の空白がある。

 海外の経済指標は、14日にアメリカの小売売上高が発表されて2014年の年末商戦の結果が確定する。16日のアメリカの鉱工業生産も重要。12日はアメリカの12月の労働情勢指数、13日は英国の12月の消費者物価指数(CPI)、中国の12月の貿易収支、アメリカの12月の財政収支、14日はフランスの12月の消費者物価指数(CPI)、アメリカの12月の小売売上高、12月の輸入物価、15日はユーロ圏の11月の貿易収支、アメリカの1月のNY連銀製造業景気指数、12月の卸売物価指数(PPI)、1月のフィラデルフィア連銀景気指数、16日はドイツ、ユーロ圏の12月の消費者物価指数(CPI)確報値、アメリカの12月の消費者物価指数(CPI)、12月の鉱工業生産・設備稼働率、1月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値、11月の対米証券投資が、それぞれ発表される。

 12~25日にアメリカ・デトロイトで北米国際自動車ショーが開催される。14日に「ベージュブック(地区連銀経済報告)」が発表される。15日は韓国とインドネシアの中央銀行が政策金利を発表する。カザフスタンの首都アスタナでウクライナ、ロシア、ドイツ、フランス4ヵ国の首脳会談が開かれる。

 アメリカ主要企業の決算発表は10~12月期決算が出始める。週後半の金融株やインテルの決算は東京市場に影響しやすい。本業が好調でも、EPS(1株当たり利益)の計算に使われる最終利益が制裁金や賠償金の支払い、買収費用などによる損失計上でひっくり返ることもあるので油断できない。12日はアルコア、13日はKBホーム、14日はJPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、15日はレナー、バンク・オブ・アメリカ、シティG、インテル、シュルンベルジェ、16日はゴールドマン・サックスが、それぞれ発表する予定。

 年明けの日経平均は大発会の5日からいきなり続落し、12月29日から年末年始の休場をはさんで4営業日続落して、その間に935円も下げてしまった。「また今年も『暗黒の1月』なのか?」「未(ひつじ)年はやっぱり『辛抱』なのか?」と、新年早々、気分が凹んだ人も少なくなかっただろう。前週後半は3連騰したものの毎日のように上値は抑え込まれて、935円の約3分の1の314円回復したにとどまった。

 「去年よりも需給が悪かったからこうなったのか?」と言えば、そんなことはない。信用倍率は2013年12月27日時点は5.14だったが、2014年12月30日時点では4.87とやや低い。裁定買い残は2013年12月27日時点は4兆433億円だったが、2014年12月30日時点では2兆9690億円で約4分の3に低下していた。少なくとも需給に関しては去年の「暗黒の1月」が繰り返される可能性は低くなっている。それは今週の市況に明るい希望を抱かせる要素の一つである。

 昨年10月までは15000円だった日経平均の下値サポートラインは、10月31日の日銀サプライズ緩和によって17000円にぐいっと押し上げられたが、前週前半はそれを割り込んでしまった。だが、昨年1月のような需給要因による構造的なものではなく、原油安、ギリシャ問題など外部要因への過剰反応に先物売り勢力が便乗した一過性のものと考えてよい。前週後半の回復が3分の1戻しにとどまったのは、3連休前というカレンダーの要素と、昨年1月発表の12月分が悪くて「暗黒の1月」に引きずり込まれたアメリカの雇用統計への警戒心によるものと考えていいだろう。その雇用統計は9日に発表され、非農業部門雇用者数は25.2万人増で市場予測の24万人を上回り、失業率は5.6%に低下して市場予測の5.7%よりも良いという上々の結果だった。9日のNYダウは今頃になってパリで起きた連続テロ事件を材料に下落したが、人質に犠牲者が出たが容疑者は全員射殺され、もう心配はいらない。

 それに加えて今週は、国内外ともさほど大きな経済指標の発表も中央銀行イベントもない「狭間の週」。東京市場としては新年早々に負った傷を癒して、18000円に再チャレンジするための態勢を整える週にすることができそうだ。

 例によってテクニカルポジションを確認しておくと、9日の終値17197.73円は5日移動平均の17108円、75日移動平均の16633円、200日移動平均の15604円よりも上だが、25日移動平均の17453円よりは下で、25日移動平均乖離率はマイナス1.46%である。ボリンジャーバンドは25日線-1σの17086円と25日線+1σの17819円の間の「ニュートラル・ゾーン」に位置する。25日騰落レシオは大発会の5日こそ102.63と100を超えていたが、6日以降は100を割り込み9日は93.78だった。ストキャスティクスの9日Fastは24.87と低位にある。テクニカル的には「買われすぎ」でも「売られすぎ」でもなく、上下どちらにも抵抗を受けずに動きやすいポジションと言える。

 ここで一つ、今週の値動きに大きな影響を与えそうなテクニカル指標を挙げておきたい。それは一目均衡表の「雲」である。一般的に、株価が雲の上にあれば雲の上限が下値支持線、雲の中にあれば雲の上限が上値抵抗線で下限が下値支持線、雲の下にあれば雲の下限が上値抵抗線の役割を果たすと言われている。つまり雲を一気に上に抜けるには上値抵抗線を2回突破せねばならない。逆に2本の下値支持線があるので、雲を突き抜けて一気に下落する事態は起こりにくい。その「雲」は9日時点では16089~16866円の範囲にあるが、今週、その上限がグイグイと上昇していくことを計算に入れたい。

 今週の「雲」の上限は、13日は17049円と17000円を超え、週末の16日には17214円まで上昇し、18日には17520円まで上昇してピークに達する。年明けから日経平均は終値でもザラ場でも一度も「雲」の上限にタッチせず、9日時点でも「雲」よりも上にあるから、その下値支持線が1週間で約500円も上にのぼっていく。ということは今週、日経平均はわき上がる雲に支えられて上がりやすく、下がりにくい、ということになる。

 今週は、下値が一目均衡表の「雲」に支えられてはね返されるとみて、仮にギリシャ問題の蒸し返しやテロの再発、原油先物価格の一段安のような外部環境の悪化、為替の円高、いつもネコのように気まぐれな人の心に翻弄されるセンチメント指数、景気ウォッチャー調査の悪化が起きたとしても、13日の「雲」の上限17049円が下値のメドになるとみる。

 上値のほうは17453円の25日移動平均の回復が最優先のミッションで、それを果たせば12月30日の大納会終値17450円も自動的に突破できる。それまでの間に立ちはだかりそうな壁としては12月のメジャーSQ値の17281円や9日のマイナーSQ値の17341円がある。9日のSQ値は、それが出た時刻よりも後では一度も上回っていないため「まぼろしに準ずるSQ」と解釈できないこともない。これがもし「まぼろしのSQ」並みのレジスタンスの闘士と化したら上値追いのエネルギーを消耗させられるかもしれない。今週は4日間しかないことも考慮すると、12月26日終値17818円をクリアして年末年始の悪夢の4日続落、935円安の全値戻しを果たすのは、ややハードルが高いと思われる。だから今週は、最優先ミッションの25日移動平均17453円のクリアが上値のメドとみる。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは、多少のりしろをつけて17000~17500円とみる。毎度世知辛いマーケットだが、わき上がる一目均衡表の「雲」に促されて上昇していくというのもまた一興。雲の上はいつも青空だ。雲ふたつ合はむとしてはまた遠く分れて消えぬ春の青ぞら(若山牧水)。(編集担当:寺尾淳)