年が明けても、デフレに陥ったヨーロッパ経済、EUがギリシャ政府に課した緊縮財政を我慢できない「ヘラスの子ら」の反乱、しつこく続くウクライナの内戦、中国の景気減速、フランスでのテロ、そして「21世紀に出現した血塗られた中世」イスラム国など、東京市場は「渡る世界は鬼ばかり」の外部要因に振り回され続けた。それも直接的にではなく、NY市場の株安、為替のドル安円高を介した「ウォール街経由」の間接的な影響を受けることが多かった。
今週は16日のNY市場は休場し(為替市場は開く)、18日から中国が旧正月の「春節休暇」に入るなど、世界のマーケットに休場が多い。休まないヨーロッパもウクライナは前週ようやく停戦合意し、ギリシャ問題も今週のユーロ圏財務相会合で決着がつくという見方が有力。言葉は悪いが「鬼の居ぬ間に洗濯」ができる週になりそうだ。しかもカレンダーは、過去のデータではおおむねパフォーマンスが良好な「SQ後週」にあたっている。
前週はドル円レートが120円台に乗った予想外の円安によって、日経平均18000円は「タッチを目指す目標」から「定着を目指す目標」に変わった。13日の終値17913.36円は、今週の18000円台定着をうかがうには絶好のポジションにつけている。
その13日終値のテクニカルポジションは5日移動平均線(17781.24円)、25日移動平均線(17440.79円)、75日移動平均線(17183.55円)、200日移動平均線(15944.08円)を、全て見下ろす位置にある。ボリンジャーバンドは6日と同様に25日線+1σ(17752.22円)と25日線+2σ(18063.64円)の間に位置する。日足一目均衡表の「雲」は16396~17356円にあり、その上限は556円も下にある。今週の「雲」は25日の「ねじれ」に向かって薄くなる方向で、下限は20日の16647円に向かって251円上昇し、上限は20日の17297円に向かって59円下落するが今週、その影響はあまりないと思われる。
25日移動平均乖離率は6日の+1.80%から+2.71%に、25日騰落レシオは6日の96.53から116.46に増加したが、買われすぎゾーンの5%、120まではまだ余裕がある。RSI(相対力指数)は逆に6日の64%から61%に低下し、買われすぎゾーンの70%が遠のいた。ボリンジャーバンドも考え合わせると上値追いの余裕はまだあり、ザラ場ベースの昨年来高値(18030円)の更新、終値の18000円台定着は十分に望めそうだ。しかしそれよりも上となるとボリンジャーバンドの25日線+2σが18063円にあり、テクニカル的にみて18200円、18300円を期待するのは高望みか。為替のドル円レートが120円台に定着したとしても、終値ベースでは18100円付近で頭を抑えられそうだ。
一方、下値は2月のSQ値が17886.04円に定まったことで底上げが望め、やや強気でもよさそうだ。海外市場の休場、ヨーロッパのリスクの低下、SQ後週、日銀会合結果発表前に現れる妙な買い出動、レジスタンスラインだった「雲」の上限を突破し12日に120円にタッチしたドル円レートなどを考慮すると、よほどの非常事態でも起こらなければ25日移動平均線の17440円まで下がることはなく、ザラ場での17600円台はあっても、終値ベースでは5日移動平均線の17781円あたりで下げ止まるとみる。
その一つの根拠として、前週のデータで注目したいのがTOPIXの堅調ぶり。10日は日経平均はマイナスだったがTOPIXはプラスで終わり、13日の終値はわずか0.01ポイント差のマイナスだった。前週のTOPIXは6日から5営業日続伸でも全くおかしくなかった。それはおしなべて好調だった国内主要企業の4~12月期決算、12月本決算の産物と言ってもいい。年明けの外部要因は波瀾万丈でも、国内の経済指標、企業業績は決して悪くない。決算発表シーズンは前週で終わったが、それが下値の底堅さとしてTOPIXのみならず今週の日経平均にも良い影響を及ぼし続けるだろう。GPIFの買いや日銀砲や個人の押し目買いだけが下値のサポート要因ではない。もし16日発表のGDPで好結果が出れば、まさに「鬼に金棒」になる。
ということで、18000円よりも上値はなかなか追えなくても下値はかなり底上げがなされると考えて、今週の日経平均終値の変動レンジは17780~18100円とみる。今週の19日は太陰暦の旧正月で「新月」。転換点としてことさら重視する人がいるが前週、すでに相場の変わり目の兆候はみられていた。「よみがえった昔日の流星王が、新月に向って飛弾のような突貫を開始したのである」(稲垣足穂「一千一秒物語」)。(編集担当:寺尾淳)